週末美容外科医です。何年かAGAを専門に治療するクリニックで診療に携わっていました。
シリーズでAGA治療、薄毛治療に関して記事をいくつか投稿していきたいと思います。
・最近、髪が細くなってきたと不安に思っている方
・薄くなってきたことを気にしている方
立ち止まって目を通してもらえると幸いです。
第1弾は⬇️こちら⬇️
そして第2弾は、「AGAの正体」ホルモンと遺伝の真実をやさしく解説します。

【結論】AGAの原因は「ホルモン」と「遺伝」がカギ
AGAは「男性型脱毛症」のことで、ホルモンの作用と遺伝的要因によって黒髪の成長サイクルが始まる前に抜けてしまう病気です。
おもに額の生え際や頭頂部から薄くなるのが特徴で、進行型の脱毛として知られています。
原因は「DHT」という男性ホルモンと、母方・父方両方の遺伝によってその感受性が決まるとする説が有力です。
それでは詳しく、順を追ってみていきましょう。
第1章:AGAとは?
※参考文献:松山淳ほか『臨床発毛医学の現状と展望』(2018年、日本再生医療学会)では、AGAでは通常の毛周期に比べて成長期が著しく短くなり、毛包の縮小(ミニチュア化)とともに軟毛化が進行するとされています。
AGA = Androgenetic Alopecia
- 日本語では「男性型脱毛症」
- 思春期以降に発症
- 次第に進行し、自然には回復しにくい脱毛が続く
■ 通常の毛周期とAGAの違い
- 髪の毛は「毛周期」と呼ばれるサイクルを繰り返します:
- 成長期(2〜6年)
- 退行期(2〜3週間)
- 休止期(3〜4ヶ月)
- そして再び成長期へ
- 通常は1日約50〜100本の抜け毛があっても、また新しい毛が生えてくるので気になりません。
- しかしAGAでは、この成長期が短縮され、髪が十分に伸びる前に抜けてしまいます。
- その結果、細く短い「産毛」のような毛ばかりが残り、薄毛が進行していくのです。
常に、手当たりや頭皮を確認すると、典型的なM型やO型の抜け模様が現れます。
🧠 MEMO:AGAの初期症状に要注意!
- ヘアサイクルの乱れによる軟毛化
- 成長期が短くなり、髪が細くなる
- 通常の抜け毛よりも“生え変わらない毛”が増える
第2章:診断方法と脱毛パターンの分類
🔍 この章のポイント
- 側頭部の薄毛は初期サインの可能性あり
- マイクロスコープで頭皮や毛穴の状態を細かくチェック
- 自己判断だけでなく、医師による診断も重要
【診断手順】
- 問診: 脱毛の経過、家族歴
- 視診: 脱毛部位のチェック
- AGAクリニックを長く続けている先輩医師が注目しているのは、初期の側頭部の毛量減少です。
- これは明らかな薄毛の前段階として現れるサインとされており、注意深い観察が必要です。
- マイクロスコープを用いた高度な失毛解析
- 頭皮の炎症や毛穴の詰まり、色素沈着の有無をチェック
- 毛穴の密度:1つの毛穴から2〜3本の発毛が正常とされ、1本しか生えていない場合は毛包の萎縮が疑われます
- 毛の太さのばらつき:太い毛と細い毛が混在する異型毛の存在は初期AGAのサイン
- 頭皮の色や血流状態:赤みやくすみがあれば炎症や血行不良の可能性
- 角質や皮脂の状態:過剰な皮脂や角化が毛穴を詰まらせているかを確認
- 休止期毛の割合:通常10〜15%程度だが、AGAではこの比率が高くなる傾向あり
【分類例】
分類 | 特徴 | 症状 |
---|---|---|
I型 | ほぼ異常なし | 見た目に変化なし |
II型 | M形の生え際後退 | 軟毛が増える |
IIvertex | O形の頭頂部脱毛 | 頭頂部が薄い |
III型 | M形の進行 | 髪量明らかに減少 |
IV型 | 生え際と頭頂部の境界が曖昧になる | 複合的に薄毛が進行 |
V型 | 生え際と頭頂部が連続し始める | 脱毛範囲が広がる |
VI型 | 前頭部と頭頂部が完全につながる | 中央部の毛髪が消失 |
VII型 | 側頭部と後頭部のみ毛髪が残る | 最も進行した状態 |

第3章:AGAの原因〜ホルモンと遺伝
※補足文献:2025年のDobrevaらによる数理モデル研究では、AGA患者の毛周期は成長期の期間に著しいばらつきがあり、再成長までの間隔も乱れがちであることが示されています。
また、近年の分子生物学的研究(Stem Cell Research & Therapy, 2025)では、毛包幹細胞を制御するWnt、SHH、BMP、Notchといったシグナル伝達経路が、AGAでは正常に働かず、成長期への移行を阻害している可能性が指摘されています。
男性ホルモンDHTの影響
- テストステロンが5αリダクターゼでDHTに
- DHTは毛包に繰り返し作用し、「成長期を短くして」脱毛を起こす

👆DHTが悪者、問うことで間違いなさそうです。
遺伝の作用
- AGAの発症リスクには強い遺伝的影響があり、双子研究ではおよそ80%が遺伝によって決まると推定されています(NCBI)。
- AR(アンドロゲン受容体)遺伝子はX染色体上に位置し、母親から受け継がれるため、特に「母方の祖父が薄毛」である場合に発症リスクが高まる傾向があります。
- ただし、父系からの遺伝も影響することが近年の研究で示されており、父親がAGAだった場合は76%の確率で本人にも発症が見られたというデータもあります(Restorehair.com)。
- また、AGAは単一の遺伝子で決まるのではなく、AR遺伝子以外にも染色体20p11領域など複数の遺伝子が関与する多因子・多遺伝子疾患(polygenic trait)と考えられています。
- これらの遺伝子の組み合わせによって発症リスクが最大7倍に達するケースも報告されています(Cosmerna.com)。
第4章:AGAの進行を止めるために
AGAの進行を食い止める方法は、自宅でできるセルフケアからクリニックでの専門治療まで幅広く存在します。なかでも筆者が強調したいのは「生活習慣の見直し」です。というのも、AGAはホルモンや遺伝だけでなく、日々の生活リズムやストレスとも深く関係しているからです。
⚠️ NG生活習慣チェック
- 睡眠不足や夜更かしが慢性化している
- 食生活が脂っこい・栄養バランスが悪い
- 運動不足・ストレスの蓄積を放置
- 髪や頭皮をゴシゴシ洗っている
睡眠不足や偏った食生活、慢性的なストレスは、ホルモンバランスを崩し、頭皮環境を悪化させる要因になります。これはAGAの進行を助長してしまうため、健康寿命の観点からも生活改善は最初に取り組むべき対策といえるでしょう。
そのうえで、必要に応じて薬物療法を検討するのが現実的なアプローチです。
AGAは遺伝やホルモンという明確なメカニズムがある一方で、実際の症状の現れ方にはストレス、栄養状態、睡眠、運動といった生活習慣の影響も無視できません。つまり、たとえ薬でホルモンにアプローチできても、日々の生活による“複合的な要因”がAGAの進行に拍車をかけている可能性があるのです。
そのため、「単に薬を飲む」だけでなく、「生活習慣の改善」こそが本質的なアプローチといえるのではないでしょうか。
- 早期発見が最大の防御
- 生活習慣:睡眠、ストレス、食事の要因は要解決
- 治療法:(治療に関しては別の記事で後述します。)
- 医療用:フィナステリド、ミノキシジル
- 日本ではデュタステリドも使用される事がある
- 市販の補助製品は「裏づけがあれば」
第5章:まとめ〜「知ること」が最大の防衛
✅ まとめポイント
- AGAは進行性の脱毛。早期対応がカギ
- 原因はホルモンと遺伝が主だが、生活習慣も無視できない
- 薬だけに頼らず、土台となる生活の改善が重要
AGAは「知ること」で打つ手が見えてきます。
まずは自分の状態やタイプを正確に把握することで、どのようなアプローチが最適なのかが明確になります。
遺伝やホルモンが関与する以上、理屈としては薬物療法による対処が必要になりますが、実際の体の反応や症状は生活習慣や環境要因も複雑に絡み合っています。
そのため、「薬物療法を否定する」のではなく、「薬物療法の効果を最大限に引き出すために、まずは生活習慣の見直しも含めてできることはすべてやる」という姿勢が、最も合理的で納得感のある対策と言えるでしょう。

サッカーフランス代表のレジェンド、ジダン選手くらい「イケて」たら、気にしないんだけどなぁ。
次回は『薄毛を加速させるNG生活習慣とそのセルフチェック』を予定しています。
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