週末美容外科医です。

AGAは「なんとなく進行する薄毛」ではありません。
形成外科・美容外科医としてAGA専門クリニックで診療してきた経験から、AGAには必ず明確な原因があると断言できます。それが男性ホルモン(DHT)と遺伝的要因です。
本記事では、AGAの仕組み、診断方法、ホルモンと遺伝の関わりを医学的根拠と共にやさしく解説します。さらに、進行を抑えるために欠かせない生活習慣改善のポイントもご紹介します。
※第1弾「薄毛治療前にまず見直すべき生活習慣」はこちら 👉記事リンク

そして第2弾は、AGAの原因はホルモンと遺伝|医師がわかりやすく解説します。

AGAとは?毛周期の乱れが生む進行性の薄毛
AGA(Androgenetic Alopecia:男性型脱毛症)は、思春期以降に発症し、額の生え際や頭頂部から徐々に薄くなる進行性の脱毛症です。自然回復はほとんどありません。
髪は「毛周期(ヘアサイクル)」を繰り返します。
- 成長期:2〜6年
- 退行期:2〜3週間
- 休止期:3〜4か月
通常は成長期が長く、抜けてもすぐ新しい毛が生えてきます。しかしAGAでは成長期が短縮し、十分に育つ前に抜けてしまいます。その結果、細く短い産毛状の毛が増え、見た目のボリュームが減っていきます。

参考:松山淳ほか『臨床発毛医学の現状と展望』(2018、日本再生医療学会)
AGAの診断方法と脱毛パターン
診断の流れ
- 問診:発症時期、進行スピード、家族歴
- 視診:脱毛部位(M型・O型)、頭皮の状態
- マイクロスコープ検査
- 毛穴の密度:正常は1毛穴あたり2〜3本
- 毛の太さのばらつき:異型毛の混在は初期サイン
- 頭皮の色や血流状態:赤み・くすみは血行不良の可能性
- 角質や皮脂の状態:毛穴詰まりの有無
※特に大事なのが「頭皮の状態」。目で見て、「赤い状態」というのは炎症が起きていて髪にとっては「非常に良くない状態」です。これが頭皮環境から来ているのか?それとも内部環境からきている炎症なのか?それを見極めることが大事です。
脱毛パターン分類(例)
- I型:変化ほぼなし
- II型:M字型の生え際後退
- II vertex:O型の頭頂部脱毛
- III〜VII型:前頭部と頭頂部がつながるまで段階的に進行

AGAの原因1|男性ホルモンDHTの影響
男性ホルモン「テストステロン」は、酵素5αリダクターゼの作用で**DHT(ジヒドロテストステロン)**に変換されます。
DHTは毛包に作用し、成長期を短くして毛を細く・短くします。これがAGA進行の直接的な原因です。
DHT抑制はAGA治療の主要ターゲットであり、フィナステリドやデュタステリドはこの仕組みに基づいています。


AGAの原因2|遺伝的要因
AGAの発症リスクの約80%は遺伝的要因によって決まるとされます(双子研究より)。
- AR遺伝子:X染色体上にあり、母方由来が多い傾向
- 父系遺伝:父親がAGAの場合、発症率は76%
- 多遺伝子性疾患:染色体20p11領域など複数遺伝子が関与
- 発症リスクが最大7倍に達する組み合わせも報告あり
(参考:NCBI、Cosmerna.com)

生活習慣がAGA進行に与える影響
AGAはホルモンと遺伝の影響が大きいですが、生活習慣も進行スピードを左右します。
NG生活習慣(要チェック)
- 睡眠不足(6時間未満)
- 高脂質・高糖質の食生活
- 運動不足
- 慢性的なストレス
- 強い洗髪や頭皮刺激
生活習慣改善は薬物療法の効果を高めるための「土台作り」として重要です。

AGA進行を止めるためのアプローチ
- 生活改善
- 睡眠:7〜8時間
- 運動:週2回以上、有酸素30〜60分
- 栄養:野菜350g以上、タンパク質確保
- 薬物療法
- フィナステリド/デュタステリド(DHT抑制)
- ミノキシジル(発毛促進)
- 併用戦略
- 生活改善+薬物療法が最も効果的

まとめ|「知ること」が最大の防御
AGAは進行性で自然には治らないため、早期発見・早期対応が重要です。
ホルモンと遺伝の仕組みを知れば、治療方針が明確になり、生活改善も行いやすくなります。
薬物療法に頼るだけでなく、生活習慣から整えることが、髪と健康を守る最も合理的な方法です。

サッカーフランス代表のレジェンド、ジダン選手くらい「イケて」たら、気にしないんだけどなぁ。
次は生活習慣の見直し編へ
今回の記事では、AGAの原因であるホルモンと遺伝について解説しました。
でも、原因が分かっても、日々の生活で髪を傷める習慣を続けていては意味がありません。
第3弾では、医師の視点から薄毛を加速させる5つの生活習慣をピックアップし、すぐに改善できるポイントを具体的にお伝えします。
あなたの髪を守るために、まずは“やってはいけない習慣”を知ることから始めましょう。
👉 【薄毛治療】【第3弾】やってはいけない!薄毛を加速させる5つの生活習慣|医師が警告するNG行動

よくある質問をまとめてみました。

- QAGAは自然に治りますか?
- A
自然回復はほぼありません。進行性のため早期対応が必要です。
- QAGAは母方遺伝だけですか?
- A
母方遺伝の影響が強いですが、父方遺伝も発症に関与します。
- Q生活習慣だけでAGAは改善しますか?
- A
初期は進行を遅らせられますが、中期以降は薬物療法が必要です。
- Q女性にもAGAはありますか?
- A
女性型脱毛症(FAGA)があり、原因や進行パターンが異なります。
- Q特に気をつけて診察していることはありますか?
- A
AGAや薄毛の進行の程度よりも「頭皮の赤み」=「炎症」の状態が重要だと思っています。


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