美容皮膚科や形成外科に「赤ら顔が気になる」と来院される方は少なくありません。赤ら顔の原因としてよく知られているのは毛細血管の拡張や酒皶(しゅさ)ですが、実は皮脂による皮膚の炎症が隠れた原因になっているケースも多くあります。
「脂っぽい肌で、赤い」「テカリと赤みが同時に気になる」という方は、皮脂腺の過活動が関係している可能性があります。この記事では、皮脂が引き起こす肌の赤みのメカニズムと、受診前からご自身でできるセルフケアについて、科学的な根拠とともに解説します。
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✍️ この記事を書いた人
Dr.オーラ|形成外科医
大学病院で形成外科・美容外科医として勤務。
忙しい外来ではなかなか細かく説明しきれないこともあると感じています。そんな外来診療で話そびれた、聞きそびれたプラスアルファを中心に発信しています。より良い日常のために少しでも役に立てば幸いです。
まず大切なこと:赤みの原因は皮脂だけではありません
顔の赤みには、さまざまな原因が存在します。
- 酒皶(しゅさ・ロザセア):毛細血管の慢性的な拡張による赤み。鼻周囲・頬に多く、中年以降の女性に多い難治性の疾患です
- 脂漏性皮膚炎:皮脂を栄養源とするマラセチア菌の増殖による炎症
- アトピー性皮膚炎・接触性皮膚炎:アレルギーや刺激による炎症
- 光線過敏症:紫外線・可視光線・赤外線の曝露による反応(光線の種類によってサンスクリーンが無効なこともあります)
- 潮紅(フラッシング):自律神経やホルモンの影響
これらは見た目が似ていても、治療法がまったく異なります。自己判断でセルフケアを続けることには限界があり、原因を特定しないままケアを続けることで、症状が悪化するケースもあります。
本記事では「皮脂が関与している可能性がある赤み・肌荒れ」に絞ってお伝えします。赤みが続く場合や症状が気になる場合は、早めに皮膚科・形成外科・美容皮膚科を受診されることをおすすめします。
皮脂が肌の赤みを引き起こすメカニズム
皮脂腺から分泌される皮脂は、本来であれば肌の保護に欠かせない存在です。しかし皮脂腺の活動が過剰になると、毛穴周囲の環境が乱れ、炎症反応が起きやすくなります。これが慢性的な赤みや肌荒れにつながります。
代表的なものが脂漏性皮膚炎です。皮脂を栄養源とするマラセチア菌が増殖し、炎症が生じることで、鼻周囲・頬・おでこを中心に赤みやフケのような症状が現れます。「ニキビではないけれど赤くなる」という方の中には、この状態が続いているケースも見られます。
皮脂腺の過活動には、ホルモンバランス・遺伝・食事・生活習慣など複数の要因が関わっています。そのため、改善のアプローチも一つではなく、多面的に取り組むことが重要です。

遺伝の要素って結構大きいと思いませんか?肌の質ってご両親から引き継ぐことが多いですよね。
病院でできる治療について
まず前提として、赤みや肌荒れが続く場合は医療機関への受診をおすすめします。皮脂が関与していると考えられる場合、医師が処方・使用を検討するものには以下があります。
内服・外用薬
トレチノイン(外用) はビタミンA誘導体で、皮脂腺の活動を抑制する効果があります。肌のターンオーバーを促進し、毛穴を整える作用もあります。ただし、トレチノインは保険適用外の自費診療となります。費用や使用方法については、受診先のクリニックでご確認ください。副作用として皮むけや赤みが出ることがあり、医師の指導のもとで使用することが重要です。

トレチノインはかなり強い薬です。まず処方される薬ではないです。イソトレチノインの内服治療もあります。こちらも非常によく効きますが副作用も出やすく、催奇形性もあります。適応は慎重に判断すべき内服薬です。
スピロノラクトン(アルダクトン) は本来は利尿剤ですが、抗アンドロゲン作用があり、皮脂分泌を抑える目的でも使用されることがあります。ホルモン的な背景が疑われるケースで選択肢になる薬剤です。
漢方薬 は、保険診療で処方できる選択肢として注目されています。十味敗毒湯は皮脂合成を抑制する作用が研究で報告されており、脂漏性皮膚炎や月経前の皮脂増加・肌荒れにも用いられています。荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)は尋常性痤瘡への保険適用をもち、皮脂が関与した炎症性の皮疹に選択されることがあります。副作用が少なく、西洋薬の外用治療と補完的に組み合わせやすい点も特徴です。漢方は専門家の処方のもとで取り入れるとよいでしょう。
美容医療(施術)
RFニードル(ラジオ波マイクロニードル) は、針を介して高周波エネルギーを真皮に直接届ける治療です。皮脂腺を選択的にダメージを与えることで、皮脂分泌を長期的に抑制する効果が期待されます(アグネス、ポテンツァなどがこれに該当します)。
IPL・レーザー治療 は、毛細血管の拡張が主体の赤みに対して有効な治療です。酒皶の赤みや毛細血管拡張に対しては、パルス色素レーザー(PDL)やIPL(Intense Pulsed Light)が用いられ、照射後に赤みやほてりが改善することが報告されています。ただし酒皶の原因そのものを改善するわけではなく、定期的な継続治療が必要になることもあります。
これらの美容医療はいずれも自費診療となります。
受診前・受診と並行してできるセルフケア
医療機関を受診するまでの間、あるいは治療と並行して、生活習慣の見直しが症状の改善に役立つことがあります。ただし正直にお伝えすると、セルフケアで劇的に皮脂が減ることはほとんどありません。皮脂分泌は多因子に影響されており、食事や睡眠を完全にコントロールすることは、忙しい現代の生活では現実的でない部分もあります。
それでも、小さな習慣の積み重ねが肌環境の底上げにつながることは事実です。

諦めたらそこで終了なんですね。
1. 洗顔の方法を見直す
「皮脂が多いから」と1日に何度も洗顔したり、洗浄力の強いソープを使うと、肌の表面のバリア機能が壊れ、かえって皮脂産生が増える可能性があります。
pHバランスの整った低刺激クレンザーを使い、朝・夜の2回を基本にしてください。泡で優しく洗い、清潔なタオルで押さえるように水気を取る習慣が肌への負担を減らします。
脂性肌・皮脂が多い方向けの石鹸については、脱脂力が調整された低刺激タイプ(いわゆる脂性肌用石鹸)が選択肢になります。過度の脱脂は避けつつ余分な皮脂をしっかり除去するバランスが大切で、洗顔回数を皮膚の状態に合わせて調節することも重要です。
2. 食事:低GI食で血糖値の急上昇を避ける
血糖値が急上昇すると、インスリンが大量に分泌され、これが皮脂腺を刺激するホルモンの分泌を促します。アメリカ皮膚科学会(AAD)も、高GI食品が炎症と皮脂産生を促進する可能性を指摘しています。
白米・白パン・砂糖の多いお菓子・清涼飲料水といった精製糖質を控え、玄米・全粒粉・豆類・野菜を中心とした食事にシフトすることが、皮脂腺の過活動を抑える一助になると考えられます。

このような食事を通してのアプローチは「皮脂分泌」のみならず、あらゆる面で健康的な生活に関わってきます。是非、見直してみることをおすすめします。
乳製品(特に牛乳)についても、一部の研究でアクネや皮脂産生との関連が示されています。完全に避ける必要はありませんが、摂りすぎている場合は量を見直してみることも一案です。
3. 脂質の「種類」を意識する
オメガ3脂肪酸(青魚・亜麻仁油・チアシードなど)は、炎症を抑える働きがあり、皮脂による炎症の軽減に役立つ可能性があります。加工食品・揚げ物・マーガリンに多いトランス脂肪酸や過剰な飽和脂肪酸は炎症を促進する方向に働くとされています。
4. ビタミン・ミネラルの補充
ビタミンA は皮脂腺の活動を調整する働きがよく知られています。医療用トレチノインも同じビタミンAの誘導体です。サプリメントとしての大量摂取は過剰症のリスクがあるため、食事(にんじん・ほうれん草・レバーなど)からの摂取が基本です。
亜鉛 は免疫調整と抗炎症作用を持ち、皮脂腺の過活動を抑える可能性があるとして研究されています。牡蠣・赤身肉・豆類・ナッツ類に多く含まれます。
ビタミンD は皮脂腺の調節に関わるとされており、不足するとインスリン抵抗性を介して皮脂産生が増加する可能性が指摘されています。
ナイアシン(ビタミンB3) は、抗炎症作用と皮脂抑制作用が研究されており、外用(スキンケア)では皮脂ケアへの使用実績があります。
5. 緑茶(EGCG)
緑茶に含まれるポリフェノール・EGCG(エピガロカテキンガレート)は、皮脂の分泌抑制と抗炎症作用が研究されています。飲用よりも外用(緑茶エキス配合スキンケア)のほうがエビデンスとしては強いですが、日常的に緑茶を飲む習慣は肌にも体全体にも悪い選択ではないでしょう。
6. ストレスと睡眠
ストレス自体が直接的に皮脂産生量を大きく変えるかについては研究上まだ議論がありますが、ホルモンバランスを乱すことは知られており、間接的に皮脂腺の活動に影響する可能性があります。睡眠の質を整え、慢性的なストレスを軽減することは、皮膚だけでなく全身の健康のためにも有益です。
日常のケアとして取り入れやすいアイテム
食事だけで必要な栄養素をすべて補うのは、忙しい毎日の中では現実的ではないかもしれません。ここでは、受診と並行して、あるいは受診前の期間に無理なく取り入れやすいアイテムをご紹介します。
これらはあくまで栄養の補助や肌環境を整える目的のものです。皮脂による赤みや肌荒れを直接治療するものではありません。
内側からのアプローチ:サプリメント
亜鉛は、皮膚や粘膜の健康維持に関わるミネラルで、皮脂トラブルに悩む方の血中濃度が低い傾向があると報告されています。食事だけでは不足しやすい栄養素のひとつです。
ビタミンD+オメガ3は、皮脂腺の調節や炎症の抑制に関わる可能性が研究で示されています。室内での生活が多い方は特に不足しやすい栄養素です。
外側からのアプローチ:スキンケア
**ナイアシンアミド(ビタミンB3)**は、皮脂分泌のコントロールや毛穴環境の改善をサポートする成分として研究が進んでいます。刺激が比較的少なく、幅広い肌質に取り入れやすいのも特徴です。ただし即効性のある成分ではなく、継続使用によって徐々に肌環境が整うものと理解してください。
「まず緑茶エキスの効果を実感してみたい」という方には、グリーンティーラインで知られる韓国コスメブランドのイニスフリーの製品が入門としておすすめです。ノンコメドジェニックテスト済みで肌への刺激に配慮した処方のため、ニキビや皮脂トラブルが気になる方でも使いやすい設計になっています。
**低刺激石鹸(脂性肌用)**は、余分な皮脂を落としつつバリア機能を壊しにくい洗顔の選択肢です。脱脂力が調整された低刺激タイプを選ぶことで、洗いすぎによる皮脂の過剰分泌を防ぎます。
※本記事はアフィリエイトリンクを含みます。商品の選定は医学的な根拠を参考にしていますが、個人の体質・肌質によって効果は異なります。
こんな症状があれば早めに受診を
セルフケアで改善できる範囲には限界があります。以下に当てはまる場合は、自己流のケアを続けず、早めに医療機関を受診してください。
- 赤みに加えて、かゆみ・フケ状の皮膚片・痛みを伴う
- 鼻周囲・眉間・頭皮など複数の部位に症状が出ている
- セルフケアを1〜2ヶ月続けても改善が見られない
- 急に症状が悪化した、または広がっている
- 市販のスキンケアで肌荒れが起きやすい
- 自分でも「原因がよくわからない」と感じている
自己流のケアをいつまでも続けることは、症状の悪化や診断の遅れにつながることがあります。 原因をきちんと特定し、適切な治療を受けることが、最も確実な改善への道です。
まとめ
皮脂が関与する肌の赤みや脂漏性皮膚炎は多因子が絡み合っており、セルフケアだけで劇的に解決することは難しいのが実情です。低GI食の実践や適切な洗顔習慣は根拠のある取り組みですが、あくまで「底上げ」のための補助的手段です。
顔の赤みの原因は皮脂だけとは限りません。酒皶(しゅさ)・アトピー・接触性皮膚炎など、見た目が似ていても治療がまったく異なる疾患が隠れていることがあります。
病院では、内服薬・外用薬・漢方(保険診療で処方可)・美容医療などのアプローチが選択肢になります。ただしトレチノインやRFニードル、IPL・レーザー治療などは保険適用外の自費診療であることも知っておいていただくと、受診時の意思決定がスムーズになります。
気になる症状がある方は、まずは専門家への相談を。あなたの肌に合った、正確な診断と治療が、最善の結果につながります。
本記事は医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。症状についてのご相談は、必ず医療機関を受診してください。

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