梅雨が明け気温が上がるこの時期、「顔のテカりが止まらない」「毛穴が目立ってきた」という声が増えます。
皮脂が増えるのはあなたのせいではありません。気温・ストレス・ホルモンという、意志ではコントロールできない要因が皮脂分泌を左右しているからです。この記事では、形成外科医の立場から皮脂分泌の仕組みと、科学的根拠のある抑制方法を成分・製品・施術の観点から解説します。
✍️ この記事を書いた人
Dr.オーラ|形成外科医
大学病院で形成外科・美容外科医として勤務。
忙しい外来ではなかなか細かく説明しきれないこともあると感じています。そんな外来診療で話そびれた、聞きそびれたプラスアルファを中心に発信しています。より良い日常のために少しでも役に立てば幸いです。
※本記事には、アフィリエイト広告・PR案件が含まれています。掲載商品・クリニックの選定にあたっては、成分の科学的妥当性や臨床的な根拠を重視しており、広告収益が内容の評価に影響することはありません。
皮脂が増える3つの原因
皮脂分泌は主に以下の要因によって変動します。
気温・湿度 皮脂腺の周囲温度が1℃上昇するごとに皮脂分泌量が約10%増加するという報告があります。夏にTゾーンが気になりやすいのは、意志の問題ではなく温熱刺激に対する皮膚の生理的な反応です。
ストレス・緊張 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)は、視床下部だけでなく皮膚の神経末梢からも分泌され、皮脂腺に直接作用することが明らかになっています。「緊張すると顔がテカる」という体感は、生物学的に正しい観察です。
アンドロゲン(男性ホルモン) テストステロンが皮脂腺内で5α還元酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)に変換され、皮脂腺を肥大・活性化します。これが思春期ニキビや、男性に皮脂過多が多い理由です。

DHTはAGA・薄毛にも関連するホルモンです。実に厄介なホルモンですね。ハゲと脂ギッシュに関わってくるホルモンだとは、、、。でも脂ギッシュでもフサフサな人がいるように単純な関係性ではないみたいです。
これらの要因を踏まえると、「洗顔を増やす」「ティッシュで押さえる」といった対策が根本解決にならない理由がわかります。皮脂の産生源である皮脂腺そのものに働きかけることが、科学的なアプローチの出発点です。
最強の皮脂抑制薬を先に紹介する理由
形成外科医・美容皮膚科医として、皮脂抑制の最終手段はイソトレチノイン(ロアキュタン)とトレチノインであることを知っています。
イソトレチノインはビタミンA誘導体の内服薬で、皮脂腺のアポトーシス(細胞死)を誘導し、皮脂分泌量を最大で80〜90%減少させます。重症のニキビには劇的な効果をもたらしますが、同時に催奇形性・肝機能障害・精神症状などのリスクを持つため、日本では処方が慎重に行われ、自由診療でのみ使用されます。
トレチノインは外用薬として使われるビタミンA酸で、皮脂腺のRAR(レチノイン酸受容体)に作用し、皮脂腺を萎縮させます。こちらも効果は確かですが、使用初期の強い皮膚刺激・乾燥・落屑が問題となります。
なぜあえてここで紹介するか。
「最強の手段が存在する」という文脈を先に示すことで、これから紹介するOTC成分が「なんとなく良さそう」ではなく、同じ生物学的メカニズムの上流にある、科学的根拠のある選択肢であることが理解しやすくなるからです。

医学的にどストレートに効く治療があなたにとって最善とは限りません。
科学的根拠のある皮脂抑制OTCアプローチ4選
① ナイアシンアミド(ビタミンB3)
作用機序 ナイアシンアミドは皮脂腺細胞に存在する核内受容体PPARγ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)の活性を抑制することで、脂質合成そのものを減少させます。PPARγは皮脂腺の分化と脂質産生に深く関与しており、これを抑えることは皮脂腺の活動全体を穏やかに下方制御することを意味します。
エビデンス 濃度2〜5%のナイアシンアミドを8週間外用した試験で、皮脂産生量の有意な減少と毛穴の目立ちの改善が確認されています。また炎症性サイトカインを抑える抗炎症作用も持つため、ニキビの炎症期にも有効です。
推奨濃度と注意点 有効濃度は2〜5%です。10%製品は効果は高まりますが、刺激感を訴える方も一定数います。敏感肌の方は低濃度から始めることを推奨します。
推奨品 The Ordinary Niacinamide 10% + Zinc 1%は、有効濃度を上回る10%ナイアシンアミドに亜鉛を組み合わせた製品で、エビデンス・コスパ・入手性の面で現時点でもっとも推奨できるOTC製品のひとつです。
② 亜鉛(内服・外用)
作用機序 亜鉛は5α還元酵素の阻害作用を持ちます。テストステロンをDHTに変換するこの酵素を抑えることで、アンドロゲン由来の皮脂腺活性化を上流でブロックします。フィナステリド(AGA治療薬)と同じ軸の作用ですが、はるかにマイルドな形で機能します。また亜鉛は皮脂腺細胞の増殖を直接抑制する作用も持ち、抗菌・抗炎症効果も加わることでニキビ全体に対して多面的に働きます。
エビデンス グルコン酸亜鉛30〜45mg/日の内服投与を12週間継続したRCTで、中等症ニキビに対して有意な改善が確認されています。抗生物質に比べると効果は穏やかですが、耐性菌リスクがない点は長期使用において優位です。
注意点 空腹時の内服は吐き気を引き起こすことがあります。食後に服用するか、キレート型(グルコン酸亜鉛・ビスグリシン酸亜鉛)を選ぶことで吸収率と胃への負担を改善できます。長期的な高用量摂取(50mg/日以上)は銅欠乏を招くことがあるため、推奨摂取量の範囲を守ることが重要です。
推奨品 NOW Foods Zinc Gluconate(グルコン酸亜鉛)はAmazonで入手しやすく、含有量・価格のバランスが優れています。
③ レチノール(外用ビタミンA)
作用機序 トレチノインと同じビタミンA系列に属しますが、皮膚内でレチノール→レチノアルデヒド→レチノイン酸(トレチノイン)の順に変換されるため、作用はより緩やかです。皮脂腺のRAR(レチノイン酸受容体)に作用し、皮脂腺の分化・増殖を抑制します。
エビデンス 0.3〜1%濃度のレチノール外用で皮脂分泌量の減少とニキビの改善が確認されており、皮膚刺激はトレチノインの数分の一です。ただし変換効率の個人差があるため、効果の出方には個体差があります。
使用上の注意 紫外線によって分解されるため、使用は夜間のみとします。導入期は週2〜3回から始め、皮膚が慣れてきたら毎晩使用へ移行します。日焼け止めの徹底が必須です。
推奨品 The Ordinary Retinol 0.2%/0.5%/1.0% in Squalaneは刺激を緩和するスクワランベースで、入門製品として使いやすいです。

レチノールとトレチノインの違いに関してもう少し詳しく知りたいという方はこちらの記事も参考にしてみてください。
④ EGCG(エピガロカテキンガレート:緑茶ポリフェノール)
作用機序 EGCGは緑茶の主要カテキンで、皮脂腺細胞においてmTORC1(タンパク質合成・細胞増殖の制御因子)を抑制することが基礎研究で示されています。mTORC1は皮脂産生における重要なシグナル伝達経路であり、これを抑制することで皮脂腺の活動が穏やかになります。またIGF-1シグナルの抑制作用も持つことから、食後インスリン・IGF-1スパイクによる皮脂過剰産生にも間接的に関与します。
位置づけ 4つの成分の中では作用が最もマイルドですが、抗酸化・抗炎症・抗菌効果を同時に持つ点でスキンケア全体への寄与が大きいです。単独での皮脂抑制というよりは、ナイアシンアミドや亜鉛との組み合わせでの使用が現実的です。
推奨品 Innisfree Green Tea Seed Serumはブランドの根幹となるEGCG配合製品で、保湿成分との複合処方になっています。
成分・アプローチ比較まとめ
| 成分 | 主な機序 | 効果の強さ | 刺激 | 形態 |
|---|---|---|---|---|
| ナイアシンアミド | PPARγ抑制→脂質合成↓ | ★★★ | 低 | 外用 |
| 亜鉛 | 5α還元酵素阻害 | ★★★ | 低 | 内服・外用 |
| レチノール | RAR活性化→皮脂腺萎縮 | ★★ | 中 | 外用(夜のみ) |
| EGCG | mTORC1抑制 | ★ | 低 | 外用 |
| トレチノイン | RAR活性化(直接) | ★★★★ | 高 | 外用(処方) |
| イソトレチノイン | 皮脂腺アポトーシス | ★★★★★ | 全身性 | 内服(処方) |
OTCでは限界を感じたら:美容皮膚科施術という選択肢
成分ケアを継続しても改善が不十分な場合、皮脂腺そのものに直接アプローチする施術が選択肢になります。
| 施術 | 機序 | 皮脂への効果 | ダウンタイム |
|---|---|---|---|
| RFニードル(アグネス・ポテンツァ) | 皮脂腺の熱凝固・破壊 | ★★★★ | 数日〜1週間 |
| PDT(光線力学療法) | 皮脂腺の選択的光破壊 | ★★★★ | 数日(光線過敏) |
| IPL・フォトフェイシャル | 皮脂腺の鎮静・抗菌 | ★★ | ほぼなし |
| ダーマペン+薬剤導入 | 有効成分の浸透促進 | ★★(補助的) | 1〜2日 |
各施術の詳細な機序・費用・クリニックの選び方については別記事で詳しく解説予定です。
皮脂ケアに関するよくある誤解
「毛穴パックで皮脂が取れる」 毛穴パックは角栓の表面部分を物理的に除去しますが、皮脂腺の産生量には影響しません。繰り返し使用することで毛穴周囲の皮膚が引き伸ばされ、かえって毛穴が目立つようになるリスクがあります。
「ノンコメドジェニック製品なら皮脂が増えない」 ノンコメドジェニックはニキビの誘発をしにくいという意味であり、皮脂分泌そのものを抑える効果を示す表示ではありません。製品選びの参考にはなりますが、それだけで皮脂ケアが完結するわけではありません。
「皮脂は洗顔で落とせばよい」 過剰な洗顔はバリア機能を破壊し、皮膚が乾燥を補うために皮脂をより多く分泌するリバウンドを招きます。洗浄力の強いクレンジングの連用は逆効果となることがあります。
まとめ:夏前に取り入れたい皮脂ケアルーティン
医師として現実的にお勧めできる組み合わせの1例は以下です。
朝 ナイアシンアミド配合セラム(The Ordinary等)→日焼け止め
夜 亜鉛内服(食後)+レチノール外用(週2〜3回から開始)
補助 EGCG配合製品を保湿ステップに組み込む
皮脂分泌は気温・ストレス・ホルモンという制御しにくい要因に左右されます。しかしナイアシンアミド・亜鉛・レチノールといった成分は、その分泌経路の上流に科学的に介入する手段として、十分なエビデンスを持っています。「何をやっても効かない」と感じている方こそ、洗顔ルーティンの見直しよりも先に、これらの成分を取り入れることを検討してみてください。
なお、皮脂分泌とAGA(男性型脱毛症)はどちらもDHTを共通の上流因子として持つため、皮脂が多い方は薄毛との関連も意識しておく価値があります。亜鉛が5α還元酵素を阻害することで皮脂とAGAの両方にアプローチできる点は、この2つの悩みを持つ方にとって特に注目したい事実です。DHTと薄毛の関係については別記事で詳しく解説します。
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本記事は医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を推奨するものではありません。症状が重い場合は皮膚科・形成外科への受診をお勧めします。

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