耳のケロイド(ピアス跡)の治療法|手術・再発率・圧迫イヤリングを形成外科医が解説

形成外科のこと

耳にできたケロイドで悩まれている方は、少なくありません。

多くの場合、きっかけはピアスです。穴を開けた後、じゅくじゅくがなかなか治らないと思っていたら、いつの間にか大きなしこりになっていた——そんなご経験をお持ちの方もいるでしょう。

耳のケロイドは部位によって大きく性格が異なります。特に**耳垂(じすい:耳たぶの柔らかい部分)**は、他のどの部位よりも手術後の再発率が低く、積極的な治療が比較的行いやすい例外的な部位です。

形成外科医の立場から、耳のケロイドの特徴・治療の選択肢・術後の再発予防まで、実際の臨床に即して解説します。

この記事のポイント
1 耳のケロイドはピアス後の感染・炎症・治癒遅延が主な誘因。金属アレルギーも関与する可能性がある。球状に膨らむ耳垂ケロイドはステロイド注射が効きにくく、最終的に切除を選ぶケースが多い
2 耳の中でも耳垂(耳たぶ)は術後再発率が5〜14%と他部位(胸部50%超)に比べて格段に低い。圧迫療法が確実に行える唯一の部位であることが最大の理由
3 圧迫イヤリングは抜糸後さらに1〜2週してから装着開始。1日8〜12時間(昼間のみでも可)・6か月以上の継続が推奨。コンプライアンスを維持できることが最優先
4 ピアス起因のケロイドは保険が査定されて自費診療になるケースがある。事前に担当医に確認することが大切

✍️ この記事を書いた人

Dr.オーラ

Dr.オーラ

形成外科専門医(日本形成外科学会)|臨床経験15年以上

大学病院で形成外科・美容外科医として勤務。忙しい外来では話しきれないプラスアルファを、科学的根拠にもとづいて発信しています。

なぜピアスで耳にケロイドができるのか

ピアスのホールは「小さな傷」です。正常であれば数週間で上皮化しますが、いくつかの条件が重なるとケロイドへ進展することがあります。

ピアスとケロイドのポイント
1 ピアスホールのじゅくじゅく(治癒遅延・慢性炎症)がケロイドへの最大の引き金。衛生管理・感染予防が重要
2 金属アレルギー(特にニッケル)による慢性炎症も関与する可能性がある。アレルギー対応素材を選ぶことが予防の基本
3 片側だけ大きくなるケースは、就寝時に患側を下にする習慣(継続的な機械的刺激)が関与している可能性がある

じゅくじゅくが続く状態が危険

ピアスのホールが長期間じゅくじゅくした状態(滲出液が続く状態)が続く場合、創傷治癒が遅延していることを意味します。治癒に時間がかかる傷ほど病的瘢痕になりやすいことは研究で示されており、遷延する炎症がケロイドへの引き金になります。

衛生管理が不十分な環境でのピアス、または不適切なアフターケアによる感染・炎症は、ケロイド形成リスクを高めます。組織学的研究では、耳垂ケロイドの約70%に血管周囲への炎症細胞浸潤が確認されており、慢性炎症が中心的な役割を果たしていることが示されています。

金属アレルギーとの関連

ニッケルなどへの金属アレルギーがある場合、アレルギー反応による慢性炎症がピアスホールに持続し、治癒の遅延・ケロイド形成リスクを高める可能性があります。ピアスを開ける際は金属アレルギーの有無を事前に確認し、チタン・サージカルステンレスなどアレルギー対応素材を選ぶことが重要です。

両耳開けているのに片方だけ大きくなるのはなぜか

「両耳にピアスを開けているのに、なぜか片方だけ大きなケロイドになる」というケースがよくあります。

原因のひとつとして、**就寝時の向き(寝相)**が関係している可能性が臨床的に指摘されています。患側を下にして枕に押しつける時間が長いほど、ピアスホールへの継続的な機械的刺激(圧迫・摩擦)が加わります。ケロイドは機械的張力によって増悪することが知られており、習慣的な寝姿勢がケロイドの片側性発症や非対称な増大に関与している可能性は生物学的に合理的です。直接証明した対照研究はまだなく、現時点では臨床的な観察に基づく考察ですが、患者さんへの説明として有用な視点です。

耳のケロイドの形態:部位による違い

耳のケロイドは発生部位によって形態と難治性が大きく異なります。

部位による違いのまとめ
1 耳垂(耳たぶ):球状・ドーム状に膨らむ形態が典型的。ステロイド注射が浸透しにくく難治なケースが多い
2 軟骨部(ヘリックスなど):耳垂より手術・圧迫療法ともに難易度が高い。軟骨の形状が整容的な切除範囲を制限する
3 耳垂は「手術後に圧迫療法が確実に行える」という解剖学的な優位性があり、他の部位と比べて積極的な治療戦略を取りやすい

耳垂(耳たぶ)のケロイドは光沢のある球状・ドーム状の隆起が典型的です。前方・後方、または耳垂を巻き込む形で膨らみます(前方ボタン型・後方ボタン型・ダンベル型など)。

この球状の形態はステロイド注射(ケナコルト-A)が効きにくい理由でもあります。コラーゲンが緻密に充填された塊には薬液が均一に浸透しにくく、何度注射しても思うように縮小しないことがあります。最終的に切除を選択する患者さんが多いのは、この難治性を反映しています。

軟骨部(耳介・ヘリックスなど)のケロイドは、耳垂と比べて手術・圧迫療法ともに難易度が上がります。軟骨の形状が複雑なため切除後の整容性の確保が難しく、圧迫デバイスの密着も困難です。

治療の選択肢

保存療法:ステロイド局所注射(ケナコルト-A)

外来でケロイドを診る段階では、すでにケロイドとして形成されていることがほとんどです。この段階での主な保存療法はステロイド局所注射です。

コラーゲン産生を抑制し病変を縮小させる効果が期待できます。3〜4週間隔での反復投与が基本ですが、球状の耳垂ケロイドでは効果が限定的なケースもあります。

ケナコルト注射の主な副作用

局所:皮膚萎縮・色素脱失・毛細血管拡張・潰瘍形成
全身(頻度は低い):ざ瘡(にきびのような発疹)・月経周期の乱れ
※外用・貼付に比べて全身への薬剤移行が多くなるため注意が必要です

手術:耳垂は例外的に再発率が低い

耳のケロイドの中でも、耳垂(耳たぶ)は特別な部位です。

手術+放射線照射後でも胸部ケロイドの再発率が50%を超えるのに対し、耳垂ケロイドでは手術+術後圧迫・ステロイド注射の組み合わせで再発率5〜14%という非常に低い数値が報告されています。この差の最大の理由は、耳垂が圧迫療法を確実に行える部位であることです。

耳垂ケロイドに対しては、放射線照射なしの手術単独、または手術+術後ステロイン注射という組み合わせが許容される場合があります。他の部位では手術単独は原則推奨されませんが、耳垂は例外的な位置づけです。

手術の方法

耳垂ケロイドの切除は主に以下の方法で行われます。

  • コアエクシジョン(核心部切除):内部を核出し皮膚を温存して低張力で閉創する。耳垂の変形を最小限に抑えられる
  • くさび(ウェッジ)切除+縫合:ケロイド全体を切除し耳垂を形成的に再建する

大きなケロイドや巻き込み型(ラップアラウンド型)では全切除が困難なため、部分切除にとどまることもあります。残存病変に対してはケナコルト注射を組み合わせるなど、段階的・複合的な対応が必要になります。

術後の再発予防

術後再発予防の組み合わせ
1 圧迫イヤリング:最重要。耳垂ケロイドの再発率を大幅に下げる。長期継続がカギ
2 ステロイド注射(ケナコルト-A):創安定後から3〜4週間隔で継続。コラーゲン産生を抑制し再増殖を防ぐ
3 シリコーンジェルシート・リザベン:補助的な選択肢。特にリザベンは投与期間の明確な基準がなく、有効性のエビデンスは限定的

手術後の再発を防ぐために、以下の治療を組み合わせます。

① 圧迫イヤリング(最重要)

詳細は次のセクションで詳しく解説します。

② ステロイン注射(ケナコルト-A)

術後の再発予防としても有効です。創が安定した時期から開始し、3〜4週間隔で反復投与します。

③ シリコーンジェルシート

創が上皮化・安定した後から使用できます。副作用が少なく、圧迫イヤリングと並行して使用できます。耳垂の形状に合わせてカットして使用しますが、耳介の軟骨がある部位では密着が難しいため、耳垂のみで使いやすい方法です。

④ トラニラスト(リザベン®)内服

気管支喘息の治療薬として開発された抗アレルギー薬で、ケロイド・肥厚性瘢痕への適応追加があります。再発予防目的で処方されることがありますが、投与期間の明確な基準はまだ確立されていません。術後放射線との併用試験では、リザベン使用群と非使用群の間に再発率の有意差を認めなかったとする報告もあり、有効性のエビデンスは限定的です。

圧迫イヤリングの使い方:実践的なガイド

術後の耳垂ケロイド再発予防において、圧迫イヤリングは最も重要かつ有効な手段です。

なぜ圧迫が効くのか

圧迫によって毛細血管が虚脱し、局所に相対的な低酸素状態が生じます。これによってコラーゲンを産生する線維芽細胞の活動が抑制され、ケロイドの再増殖を防ぐと考えられています。必要な圧力は24mmHg以上とされており、この圧力を持続的に加え続けることが鍵です。

いつから装着するか

創が安定してから開始することが重要です。

研究・施設 装着開始時期
Brent(古典的報告) 術後2週間後
磁気圧迫療法(韓国) 術後2週間後(創傷遅延がある場合は3週間後に延期)
カスタムクリップ(オランダ) 術後4〜5週間後

抜糸(術後1〜2週)の後、さらに1〜2週間ほど創の安定を確認してから装着を開始するという方法は、文献的なプロトコルとも整合しています。

1日何時間つければいいか

系統的レビューでは、ほとんどの研究が1日8〜12時間の装着を推奨しています。装着時間・デバイスの種類・圧力はいずれも研究間で標準化されておらず、「24時間連続装着が必須」というエビデンスは存在しません。

また「3時間装着・2時間休憩」という間欠的プロトコル(1日9時間)でも、連続装着と同等の効果が示されています。この研究は、快適さとコンプライアンスの維持を重視した設計です。

昼間のみの装着(夜間は外す)というアプローチは、文献的に許容範囲内です。 夜間の装着は就寝中に外れるリスク・皮膚トラブルのリスクがあります。無理な連続装着を求めてコンプライアンスが低下するよりも、昼間しっかり装着を続けることの方が長期的に有効です。大事な用事でつけられない日があることも、現実的に許容される範囲です。

どのくらい続けるか

多くの研究で6か月以上、できれば12〜18か月の継続が推奨されています。圧迫をやめると再発リスクが高まるため、途中でやめずに継続することが最も重要です。

圧迫イヤリングの実践まとめ
1 装着開始:抜糸後にさらに1〜2週間創の安定を確認してから。創傷遅延がある場合はさらに遅らせる
2 装着時間:1日8〜12時間が推奨。昼間のみ(夜間は外す)でも許容範囲内。コンプライアンスを維持できることが最優先
3 継続期間:最低6か月、できれば12〜18か月。途中でやめると再発リスクが高まる
4 必要な圧力:24mmHg以上。磁気式(ネオジム磁石)は一定圧力を加えやすく、シリコーンシートとの併用も有効
Dr.オーラ
Dr.オーラ

「毎日完璧につけなければいけない」というプレッシャーを感じると、かえってやめてしまう方が増えます。大事な用事でつけられない日は仕方ありません。それよりも、装着できる日に確実につける習慣を長く続けることが大切です。

保険適用について

耳のケロイドの治療は原則として保険診療の対象となりますが、ピアスによる耳垂ケロイドは自己行為が原因であるとして、一部の審査では保険請求が**査定(減点・返戻)**されるケースがあるとされています。

この問題は医療機関や審査機関の判断によって異なり、全国一律ではありません。受診前に担当医に確認し、自費診療となる可能性も理解したうえで治療を開始することをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q ピアスを外せばケロイドは治りますか?

A ピアスを外しても、すでに形成されたケロイドは自然には消えません。ただしピアスを継続することで炎症・刺激が加わり続けるため、治療期間中はピアスを控えることが一般的に推奨されます。

Q 手術後また再発しますか?

A 再発の可能性はありますが、耳垂は他の部位より大幅に低い再発率(5〜14%)が報告されています。術後の圧迫イヤリングをしっかり継続することが再発予防の鍵です。

Q 軟骨部(ヘリックスなど)のケロイドはどう治療しますか?

A 耳垂より難治で、再発率も高い傾向があります。整容上の問題から切除範囲が限られることも多く、放射線照射の追加や長期的なケアが必要になるケースがあります。形成外科専門医との相談が重要です。

Q ケロイド体質でも、またピアスを開けられますか?

A 推奨できません。再びケロイドが生じる可能性が高く、以前より大きく・治りにくくなることもあります。担当の形成外科医に相談のうえ慎重に判断してください。

まとめ

この記事のポイント
1 耳のケロイドはピアス後の感染・炎症・治癒遅延が主な誘因。金属アレルギーも関与する可能性がある。球状に膨らむ耳垂ケロイドはステロイン注射が効きにくく、最終的に切除を選ぶケースが多い
2 耳の中でも耳垂(耳たぶ)は術後再発率が5〜14%と他部位(胸部50%超)に比べて格段に低い。圧迫療法が確実に行える唯一の部位であることが最大の理由
3 圧迫イヤリングは抜糸後さらに1〜2週してから装着開始。1日8〜12時間(昼間のみでも可)・6か月以上の継続が推奨。コンプライアンスを維持できることが最優先
4 ピアス起因のケロイドは保険が査定されて自費診療になるケースがある。事前に担当医に確認することが大切

耳のケロイドは適切な治療と術後ケアを組み合わせることで、多くの方で長期的な安定が得られます。まずは形成外科専門医に相談してみてください。

治療後の経過が気になる方へ: 術後しばらく経っても傷が硬いまま、赤みが引かない——そんなときはケロイドの再発を疑うサインかもしれません。「正常な瘢痕の変化」と「再発の兆候」の見分け方について、次の記事で詳しく解説しています。

→ [ケロイドが再発しているかもしれないサイン|術後の経過と要注意な変化を形成外科医が解説]

参考文献

参考文献
1 Brent B. The role of pressure therapy in management of earlobe keloids: preliminary report of a controlled study. Ann Plast Surg. 1978;1(6):579-581. PMID: 747308
2 Yoo HJ, et al. Clinical analysis of lobular keloid after ear piercing. Arch Plast Surg. 2017;44(4):342-347. PMC5556724
3 Ogawa R, et al. Surgical excision and postoperative radiotherapy for keloids. Scars Burn Heal. 2019;5:2059513119891113. PMC6904783
4 Jun DW, Shin DH, Choi H. Clinical efficacy of intermittent magnetic pressure therapy for ear keloid treatment after excision. Arch Craniofac Surg. 2019;20(6):354-360. PMC6949498
5 Kasyanju Carrero LM, et al. Compression therapy for keloid scars: a systematic review and meta-analysis. Wound Repair Regen. 2024. PMC11150022
6 Tanaydin V, et al. Efficacy of custom-made pressure clips for ear keloid treatment after surgical excision. J Plast Reconstr Aesthet Surg. 2016;69(1):115-121. PMID: 26409773
7 Tashiro K, et al. Risk factors of recurrence after postoperative electron beam radiation therapy for keloid. J Radiat Res. 2020;61(5):758-764. PMC7270504
8 日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会. 形成外科診療ガイドライン 第3巻 創傷疾患(ケロイド・肥厚性瘢痕)2021年版.
👨‍⚕️ この記事の監修者

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Dr.オーラ

Dr.オーラ

形成外科専門医(日本形成外科学会)|臨床経験15年以上

大学病院で形成外科・再建外科医として勤務。大学病院以外にも美容皮膚科やAGAクリニックでの臨床経験も豊富。外科医は「すぐに効果が出る」治療を優先しがちですが、それが患者さんにとって「最適な治療」とは限りません。「日常からできること」を外来で話すには時間が足りません。形成外科のこと・美容医療・スキンケア・AGAなど、外来で話しきれない医学的な本音を科学的根拠にもとづいて発信。商業バイアスなく、読者が自分で判断できる情報を届けることをモットーとしています。

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