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美容皮膚科で診療をしていると、
「あごのニキビがずっと治らない」
という相談を、かなりよく受けます。
特に多い印象があるのが、20代半ば〜40代くらいの女性。
思春期の頃はそれほどニキビに悩まなかったのに、
「あごだけ、繰り返す」
「生理前になると、また同じ場所にできる」
「ピーリングもスキンケアもしているのに治らない」
そんな方です。
今回は、この「あごニキビ」について。
なぜ繰り返すのか。
そして、僕ならどんな治療を考えるのか。
美容皮膚科クリニックに勤務する立場から、できるだけシンプルに整理してみます。

まず、ニキビは「アクネ菌の感染」だけではありません
ニキビというと、
「毛穴にアクネ菌が増えて炎症を起こす」
というイメージがあるかもしれません。
もちろん、**Cutibacterium acnes(いわゆるアクネ菌)**はニキビの炎症に関係します。
ただ、それだけではありません。
ニキビができる背景には、大きく
- 皮脂の分泌
- 毛穴の角化・つまり
- C. acnes
- 炎症
などが複雑に関係しています。
つまり、
菌だけを退治すればニキビができなくなるわけではない。
ここが大事です。
特に、
「皮脂が多い」
「毛穴が詰まりやすい」
この2つがあると、ニキビのできやすい環境が維持されてしまいます。
なので、
ニキビを1個ずつ治すだけではなく、
「ニキビのできにくい毛穴をつくる」
という考え方が重要になります。
女性の「あごニキビ」でよく聞く話

あごニキビの患者さんから、かなりよく聞くのが、
「生理前になると悪化します」
という話。
これは決して珍しいことではありません。
成人女性を調べた研究でも、月経前後にニキビが悪化すると答える女性はかなりの割合にのぼります。
ホルモンの変動が皮脂腺や毛包の環境に影響していると考えられています。
そして、皮脂腺は**アンドロゲン(男性ホルモン)**の影響を受ける組織です。
男性ホルモンという名前ですが、もちろん女性の体内にも存在します。
アンドロゲンの作用によって皮脂腺が刺激され、皮脂産生が増えることはよく知られています。
ただし、「あごニキビ=ホルモン性」と決めつけない
ここは少し注意が必要です。
成人女性のニキビというと、
「あご」
「フェイスライン」
「ホルモン性ニキビ」
というイメージがかなり定着しています。
実際、下顔面に炎症性ニキビが目立つ女性はいます。
ただ、大規模な研究では、
成人女性のニキビの多くが、必ずしもあごだけに限局しているわけではない
ことも分かっています。
つまり、
「あごにできた=ホルモン異常」
ではありません。
場所だけで判断するというより、
- 月経周期に合わせて悪化する
- 成人してからも繰り返している
- 皮脂が多い
- 面皰治療をしていても炎症性ニキビが繰り返す
こうした要素がある場合は「ホルモンが悪さをしている」可能性が高いと考えます。
例えば、こんな人です
僕が皮脂腺の関与を強く考えるのは、
「生理前になると毎回悪くなる」
そして、
「ピーリングや角質ケアをしているのに、またできる」
という人。
角質に対するアプローチをしても繰り返す。
それなら、
「毛穴が詰まること」だけでなく、
その奥にある皮脂腺そのものが元気すぎるのでは?
と考えるわけです。
ここから治療の選択肢が変わってきます。
まずは普通のニキビ治療

ここは飛ばしてはいけません。
ニキビ治療の基本は、
です。
これは現在のニキビ治療でも中心となる方法です。
毛穴のつまりを改善しながら、炎症性ニキビを抑えていく。
軽症〜中等症であれば、
まずここをきちんと行う。
これが基本だと思います。
それでも「あごだけ繰り返す」
ここからが今回の本題です。
標準的な治療をしている。
スキンケアもしている。
それでも、
同じところに何度もできる。
特に月経周期に合わせて繰り返す。
そういう場合には、
皮脂腺にもう少し直接アプローチする
という考え方があります。
大きく分けると、
このあたりです。
① スピロノラクトン
女性のニキビ治療で使われることがある薬に、
スピロノラクトン
があります。
もともとはカリウム保持性利尿薬です。
ただし、この薬には抗アンドロゲン作用があります。
その作用を利用して、女性のニキビ治療に使われることがあります。
2023年には成人女性のニキビを対象にした比較的大きなランダム化比較試験も報告されています。
つまり、
「女性の繰り返すニキビにスピロノラクトンが効く」
という話には、それなりの臨床的根拠があります。
ただし。
もともとはニキビ専用の薬ではありません。
血圧、腎機能、カリウム、妊娠可能性など、患者さんによって考えることがあります。
ですので、
「生理前にニキビができるから飲んでみよう」
というほど単純な薬でもありません。
皮膚科の先生と相談しながら選択する治療だと思います。
② イソトレチノイン
そして、
皮脂腺を抑える薬として非常に強力なのが
イソトレチノイン
です。
ニキビ治療を語る上では、避けて通れない薬です。
皮脂分泌を大きく低下させるだけでなく、ニキビ形成に関わる複数の経路に作用します。
特に、
では非常に重要な選択肢になります。
詳しくはこちらに書いています。
効果が強い一方、
乾燥、採血管理、妊娠に対する厳格な注意など、
考えなければならないことも多い薬です。
なので僕自身は、
重症ニキビには非常に良い治療
だと思っています。
一方で、
「毎月あごに数個できる」
という程度のお困りであれば、
いきなりイソトレチノインまで行かずに済む方法はないかな、
とも考えます。
③ 塗り薬ならレチノイド
ここで少し整理しておきます。
トレチノインやアダパレンなどのレチノイドは、ニキビ治療に重要な薬です。
ただ、
「皮脂腺を強力に縮小して皮脂を止める薬」
という意味では、内服のイソトレチノインとは分けて考えた方がよいです。
外用レチノイドの主な役割は、
毛穴の異常な角化を正常化して、面皰をできにくくすること。
つまり、
「皮脂そのものを止める」というより、
皮脂が詰まってニキビになる入口を改善する
というイメージの方が近いです。
美容医療ではトレチノインを色素治療などに使うこともありますが、
ニキビそのものに対しては、アダパレンなど保険診療で使用できる標準的な治療があります。
まずはこちらを優先するのが自然です。
そして、皮脂腺を直接狙うという考え方
ここから少し美容医療寄りの話です。
皮脂腺に針を入れて、
RF(radiofrequency:高周波)
による熱を加える治療があります。
「アグネス」
「アクネスニードル」
などと呼ばれている治療です。
ポテンツァなどのマイクロニードルRF機器でもニキビ治療は行われますが、
機器、針、照射方法によって治療の考え方は少し違います。
僕がここでお話ししているのは、
皮脂腺を狙って針を入れ、RFの熱で選択的にダメージを与える治療
です。
何をしている治療なのか
仕組みは比較的シンプルです。
ニキビの原因となっている毛穴に細い針を挿入します。
その針先からRFを流す。
電気エネルギーが熱に変換され、
毛包・皮脂腺周囲に熱作用を加える。
つまり、
薬で皮脂腺の活動を一時的に抑えるのとは少し違い、
皮脂腺そのものに物理的なダメージを与える
という考え方です。
ここが、この治療の面白いところだと思います。
RF治療には本当に根拠がある?
あります。
ただし、
イソトレチノインや標準的な外用治療ほど、エビデンスが豊富な治療ではありません。
ここは分けて考える必要があります。
つまり、
皮脂腺をRFで狙うという治療コンセプト自体には、臨床的な裏付けがあります。
ただし研究数はまだ多くありません。
ですので、
「ニキビならRFが一番」
という話ではありません。
あくまで、
標準治療をした上で、条件が合う人に考える選択肢
という位置づけが妥当だと思います。
実際に治療していて思うこと
ここからは論文ではなく、
僕自身の臨床での印象です。
何度も同じところにニキビができる方に対して、
皮脂腺を狙ったRF治療を行っていると、
2〜3回治療した場所は、かなりニキビができにくくなる
という印象があります。
もちろん全員ではありません。
重症度にもよります。
ですが、
「またここにできました」
を繰り返していた場所が静かになっていく。
これは比較的実感しやすい治療です。
僕なら、こんな人に考えます
個人的には、
こういう方であれば、
皮脂腺を狙ったRF治療を一度検討してもよい
と思っています。
逆に、
まだアダパレンやBPOも十分使っていない。
ニキビが顔全体にかなり多い。
瘢痕を作るほど重症。
という人なら、
RFだけをちまちま当てるより、
まず標準治療やイソトレチノインを含めた全体治療を考えます。
デメリットもあります
もちろん良いことばかりではありません。
針を刺して熱を加えるので、
などは起こり得ます。
赤み自体は比較的早く改善することが多いですが、(ダウンタイムは1、2日くらい)
特に炎症後色素沈着は肌質によって残ることがあります。
日焼け止めなどのケアも重要です。
ただ、
少し難しいところですが、
ニキビそのものを繰り返していても色素沈着は起こります。
なので僕は、
「色素沈着が怖いから何もしない」
ではなく、
「ニキビを繰り返すことによる色素沈着」と
「治療に伴う色素沈着」
の両方を考えて治療を選ぶのが現実的だと思っています。
「あご」という場所より、繰り返し方を見る

今回一番伝えたいのはここです。
あごにニキビがあるからRFをしましょう。
という話ではありません。
同じ「あごニキビ」でも、
原因は人によって違います。
でも、
こういうパターンであれば、
「皮脂腺がこのニキビにどれくらい関わっているのだろう?」
と考えてみる価値があります。
そして、
皮脂腺へのアプローチには、
スピロノラクトンもある。
イソトレチノインもある。
RF治療もある。
どれが絶対に正しい、というわけではありません。
ニキビの程度と、
どこまで治したいのか。
内服を許容できるのか。
ダウンタイムを許容できるのか。
そこから選べばよいと思います。
個人的には
軽症〜中等症で、
「あごに何度も同じニキビができる」
という方には、
まず標準的な外用治療をきちんと行う。
それでも繰り返して、
なおかつ内服治療まではしたくない。
そんな方なら、
皮脂腺を狙ったRF治療は、結構おもしろい選択肢だと思っています。
派手な治療ではありません。
すべてのニキビを治す魔法の治療でもありません。
でも、
「毎月ここにできる」
というニキビを減らしたい人には、
決して怪しくはない理屈の通った治療のひとつです。
クリニックを探すなら

この治療はすべての美容皮膚科で行っているわけではありません。
キレイパスなどで探す場合は、
「ニキビ RF治療」
よりも、
「アグネス ニキビ」
「アクネスニードル」
「皮脂腺 RF ニキビ」
などで検索した方が、
今回紹介した治療に近い施術を見つけやすいと思います。
「ポテンツァ ニキビ」だけだと、
ニキビ跡に対するマイクロニードルRFなど、少し目的の違う施術も多く出てきます。
そのため、
「皮脂腺を狙ったRF治療なのか」
を確認して選ぶとよいと思います。
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参考文献
- Reynolds RV, et al. Guidelines of care for the management of acne vulgaris. J Am Acad Dermatol. 2024.
- Santer M, et al. Effectiveness of spironolactone for women with acne vulgaris (SAFA): pragmatic, multicentre, phase 3, double blind, randomised controlled trial. BMJ. 2023;381.
- Lucky AW. Quantitative documentation of a premenstrual flare of facial acne in adult women. Arch Dermatol. 2004;140:423-424.
- Saint-Jean M, et al. Characteristics of premenstrual acne flare-up and benefits of a dermocosmetic treatment: a double-blind randomised trial. Eur J Dermatol. 2017.
- Ahn GR, et al. Selective Sebaceous Gland Electrothermolysis Using a Single Microneedle Radiofrequency Device for Acne Patients: A Prospective Randomized Controlled Study. Lasers Surg Med. 2020;52:396-401.
※本記事は一般的な医学情報を提供するもので、個別の診断・治療を行うものではありません。ニキビの治療は重症度、妊娠可能性、既往歴、使用中の薬などによって選択肢が変わります。



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