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顔に茶色い色素斑ができると、私たちはついひとまとめに「シミ」と呼んでしまいます。
しかし医学的には、いわゆる「シミ」の中には、老人性色素斑、肝斑、ADM、炎症後色素沈着など、原因も性質も異なる複数の色素性病変が含まれています。
見た目が似ていても、治療法は同じとは限りません。
むしろ、何を「シミ」と診断するかによって、選ぶべき治療は大きく変わります。
肝斑は刺激によって悪化することがあり、老人性色素斑と同じ感覚で治療を進めるとうまくいかないことがあります。
そこで前編では、
シミ治療は、レーザーやIPLを選ぶところから始まるのではありません。
まず、自分の肌に何が起きているのかを知ること。
それが、治療を遠回りさせないための第一歩です。
「シミ」は医学用語ではない
一般には、顔にできた茶色〜褐色の色素斑をまとめて「シミ」と呼びますが、その中には、
など、原因も性質も異なる複数の病変が含まれています。
見た目が似ていても、メラニンが存在する深さや、色素が増える仕組みはそれぞれ異なります。
そのため、「茶色いから全部同じ治療」というわけにはいきません。
さらに実際の肌では、一つの病変だけでなく、老人性色素斑と肝斑、ADMなどが同じ頬に混在していることもあります。
つまりシミ治療で最初に必要なのは、「どのレーザーを使うか」を決めることではありません。
なお、まれではありますが、「シミ」に見える病変の中に日光角化症や悪性腫瘍などが含まれることもあります。急に大きくなる、形や色が変わる、出血するなどの変化がある場合は、美容施術を受ける前に皮膚科での診察が優先されます。
皮膚の構造を知ることが、シミを理解する第一歩
シミの種類を見分けるうえで重要なのが、
皮膚は大きく、外側から表皮・真皮・皮下組織に分かれています。
通常、メラニンをつくるメラノサイトは表皮の最も深い部分に存在します。紫外線や炎症などによってメラニンが増えると、老人性色素斑や雀卵斑、炎症後色素沈着などのように、主に表皮側の色素斑として見えてきます。
一方、ADMや太田母斑では、より深い真皮にメラニンを持つ細胞が存在します。
この違いは、見た目だけでなく治療にも関係します。
一般に、表皮に近い色素は茶色〜黒褐色に見えやすく、真皮にある色素は青〜灰色がかって見えることがあります。
それによって、選ぶ治療や必要な治療回数が変わってきます。
この「深さ」という考え方を知っておくと、次に出てくる老人性色素斑・ADM・肝斑などの違いがぐっと理解しやすくなります。

シミの種類を解体する
表皮性の色素斑
老人性色素斑(日光黒子)
いわゆる「シミ」の代表です。紫外線を長年浴びた頬や額、手の甲などにできやすく、境界が比較的はっきりした茶色〜褐色の色素斑として見られます。
年齢とともに増える傾向がありますが、濃さや大きさには個人差があります。
雀卵斑(そばかす)
鼻から両頬にかけて散在する、数mm程度の小さな褐色斑です。幼少期からみられることが多く、紫外線の強い季節に濃くなりやすいのが特徴です。
遺伝的な素因が強く、老人性色素斑とは発症時期や分布が異なります。
炎症後色素沈着(PIH)
ニキビ、かぶれ、虫刺され、レーザー治療など、皮膚に炎症が起きたあとに残る茶色い色素沈着です。
炎症がおさまれば少しずつ薄くなることが多いものの、改善には数か月〜年単位かかることもあります。紫外線や摩擦などの刺激を減らすことも重要です。
脂漏性角化症(老人性疣贅)
患者さんからは「シミ」と相談されることがありますが、実際には少し盛り上がった良性の角化性病変です。
表面のざらつきや隆起がヒントになりますが、初期には平坦なこともあり、老人性色素斑などとの鑑別が難しい場合があります。
真皮性の色素斑
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)
両頬骨部などに、灰褐色〜青みを帯びた小さな色素斑が左右対称に現れることが多い病変です。病変の主体は真皮にあり、若年〜成人期に出現します。
特に重要なのが肝斑との鑑別です。ADMと肝斑は見た目が似ることがあり、さらに両者が混在することもあります。
太田母斑
顔の片側を中心にみられることの多い、青〜青紫色、灰褐色の色素斑です。ADMと同じく真皮メラノサイトーシスに含まれます。基本的には生まれつきあるものです。
ADMとは、分布や発症時期などを含めて鑑別します。
「シミ」と「肝斑」は、同じように扱えない
ここで特に注意したいのが、老人性色素斑などの一般的な「シミ」と肝斑の違いです。
老人性色素斑は、比較的境界のはっきりした「点」として見えることが多い一方、肝斑は頬骨部などに左右対称の淡い褐色斑が面状に広がることがあります。
肝斑は紫外線やホルモン、摩擦など複数の要因が関係し、刺激によって悪化しやすいのが特徴です。
そのため、老人性色素斑と同じ感覚で強いレーザー治療を行うと、かえって色調が濃くなることがあります。
つまり大切なのは、
この違いが、治療の順番を考えるうえでも非常に重要になります。
実際には「混在」している
ここまで、老人性色素斑・ADM・肝斑はそれぞれ別の病変として説明してきました。
しかし実際の診療では、
たとえば、頬に老人性色素斑があり、その背景に肝斑が広がっている。
あるいは、ADMと肝斑が同じ部位に混在している——ということもあります。
だからこそ、
何があるのかを見極め、どこから治療するのかを決める。
この“順番”が、治療結果を左右します。
では、実際にどのような順番で治療を組み立てればよいのでしょうか。
その考え方を、後編で詳しく解説します。
クリニックを受診する前に知っておくこと

シミ治療で大切なのは、
同じ茶色い色素斑に見えても、老人性色素斑・肝斑・ADMなどでは治療の考え方が異なります。
クリニックでは、施術を決める前に次の3つを確認してみてください。
機械名や価格だけで治療を選ぶのではなく、「診断 → 治療方針」の順番で説明してくれるかを見ることが、クリニック選びの一つの目安になります。
まとめ:シミは「一言」で片付けられない
「シミ」と呼ばれているものの中には、老人性色素斑、雀卵斑、炎症後色素沈着、ADM、肝斑など、性質の異なる複数の色素性病変が含まれています。
見た目が似ていても、メラニンの深さや病変の性質が違えば、治療の考え方も変わります。
さらに実際の肌では、これらが一つだけ存在するとは限らず、複数の病変が混在していることもあります。
だからこそ、シミ治療で最初に大切なのは「どの機械を使うか」ではなく、まず何があるのかを見極めることです。
では、診断したあと、どの病変から、どのような順番で治療していけばよいのでしょうか。
参考文献
- 山本晴代. 美肌になるためのシミ治療. MB Derma. 2025;364:23-31.
- 宮田彩可, 宮田成章, 須賀康. 後天性真皮メラノサイトーシス. MB Derma. 2023;330:75-82.
- 山下理絵, 近藤謙司. シミ(加齢性混在型色素斑)の治療. 形成外科. 2024;67(3):233-242.
- 牧野輝彦. 光による皮膚の老化. 皮膚科. 2025;8(4):296-303.
- 秋田浩孝. 肝斑診療②—私はこうしている—. MB Derma. 2024;353:69-75.
- 船坂陽子. 妊婦の肝斑とその対策. 皮膚科. 2024;6(6):588-592.
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