「このホクロ、取ってしまいたい」と思ったとき、次に浮かぶのは「レーザーと手術、どっちがいいの?」「保険は使えるの?」「跡は残らないの?」という疑問だと思います。

インターネットで調べると、クリニックによって説明がまちまちで、かえって迷ってしまうこともあるかもしれません。この記事では、美容皮膚科クリニックで1万個以上のホクロを炭酸ガスレーザーで治療し、大学病院の形成外科でも数多くの切除手術を経験してきた形成外科医の視点から、レーザーと手術それぞれの特徴、保険適用の考え方、そして跡が残りやすいケースについて、実際の診療でよくお伝えしている内容を整理します。
結論:治療法は「部位」「大きさ」「深さ」の3つで考えます
ホクロの治療には、大きく分けて炭酸ガスレーザーによる蒸散と、**メスによる切除縫合(手術)**の2つの方法があります。どちらを選ぶかは、ホクロができている部位・大きさ、そして実際にはやってみないと分からない「深さ」によって変わってきます。
保険適用については、原則として保険診療で対応可能と考えてよいケースがほとんどですが、審査基準の運用には地域や医療機関による幅があり、最終的には受診先の医療機関の判断によるところもあります。
レーザーと手術、それぞれの特徴
炭酸ガスレーザーは、水分に吸収される性質を利用してホクロの組織を蒸散させる治療法です。出血が少なく、局所麻酔で日帰り施術が可能で、縫合の必要がないという特徴があります。
**手術(切除縫合)**は、メスでホクロを切り取り、糸で縫い合わせる方法です。傷はシワに沿った線状の跡として残りますが、切除した組織を病理検査に回せるため、悪性が疑われる場合や確実な診断が必要な場合には手術が選択されます。
保険適用の考え方
「ホクロの除去は保険が使えるのか、自費なのか」は、患者さんからよくいただくご質問です。
美容目的とみなされる場合は自費診療になりますが、良性・悪性の判断がつかない場合や、こすれる・引っかかるといった機能的な問題がある場合は、保険診療で切除(病理検査込み)を行うことができるのが原則です。ただし、審査を行うレセプトの判断には地域差があり、医療機関によって運用の幅があるのが実情です。よほど厳格に扱われない限り、多くの場合は保険診療で対応可能と考えてよいと思います。
なお、炭酸ガスレーザーによる治療は、美容目的とみなされることが多く、自費診療となるのが一般的です。
部位・大きさによる治療法の目安

一般的には、顔かそれ以外かで、レーザーが適応しやすいかどうかの目安が変わります。
- 顔:皮膚が薄く、肥厚性瘢痕になりにくい部位が多いため、レーザーで対応できる範囲が比較的広く、7〜8mm程度のホクロでもレーザーで治療することがあります。
- 顔以外:皮膚が厚く、体を動かす際の張力もかかりやすいため肥厚性瘢痕になりやすく、レーザーで対応する範囲は3〜4mm程度が一つの目安になります。それより大きい場合は、手術の方が結果的にきれいに仕上がることがあります。
ただし、顔の中でも例外的な部位があります。上口唇と鼻の間(人中)など唇の周囲の皮膚は、顔の他の部位と比べて厚みがあり、肥厚性瘢痕になりやすい傾向があります。そのため、同じ「顔」でも、唇周辺のホクロはレーザーで許容できるサイズが小さめになると考えています。

実際の診療でも、ホクロの傷跡が気になって再受診される患者さんは、唇の周囲や背中などの体幹部をレーザーで治療した方に多い印象があります。
跡が残りやすいかどうかは「大きさ」だけでなく「深さ」による
肥厚性瘢痕のリスクは、傷の深さ・部位にかかる張力・体質など複数の要因が関わるとされており、真皮の深い部分まで損傷を受けるほど、跡が残りやすくなると考えられています。これはホクロの治療にもそのまま当てはまり、ホクロそのものの深さが、仕上がりを左右する大きな要因になります。(肥厚性瘢痕に関しては肥厚性瘢痕とケロイドの違いを扱った記事でも詳細を記述しています。)
ホクロの深さは、実際に処置をしてみないと正確には分かりませんが、数多くのホクロを診てきた経験から、ある程度の見当をつけることができます。個人的な印象としては、平坦で茶色いホクロよりも、隆起していて灰色がかったホクロの方が、深い位置まで母斑細胞が及んでいることが多いように感じます。前回の記事で触れた分類でいえば、境界母斑(浅い・平坦)に比べて、真皮内母斑(深い・隆起)の方が、この傾向に近いと考えられます。
深いホクロほど治癒に時間がかかり、それだけ肥厚性瘢痕になるリスクも高まる、というのが臨床的な実感です。
特に注意したい部位:男性のひげが生えている場所のホクロ
もう一つ、経験上お伝えしておきたいのが、男性のひげが生えている部位にあるホクロです。
毛穴を巻き込むようにホクロができている場合、ホクロの母斑細胞が毛包の上皮に沿って深くまで及んでいることが多く、根が深い傾向があります。そのため、このタイプのホクロは、
- 再発しやすい
- 肥厚性瘢痕になりやすい
- 治療した部分の毛が生えてこなくなることがある
といった、他の部位とは異なるリスクを併せ持っています。とはいえ、実際の診療では「多少のリスクよりも、ホクロがなくなる方が嬉しい」と考える方が多いというのが実感です。リスクを正しく理解したうえで、納得して治療を選んでいただければと思います。
受診時に確認しておきたいこと
- ご自身のホクロが、レーザーと手術のどちらの適応になりそうか
- 保険診療で対応可能か、自費診療になるか
- 想定される傷跡の経過(赤み・硬さが落ち着くまでの期間の目安)
- 再発した場合の対応
注意点
ここでご紹介した「顔は7〜8mm、顔以外は3〜4mm」といった目安は、あくまで臨床上の一般的な感覚であり、実際の適応は医師が診察のうえで個別に判断します。同じ大きさのホクロでも、深さや部位によって最終的な選択は変わります。
これまで美容皮膚科クリニックで1万個以上のホクロを炭酸ガスレーザーで治療し、大学病院の形成外科では悪性が疑われるホクロの切除手術も数多く経験してきました。「レーザーでサッと取りたい」というご希望は、とてもよく分かります。ただ、部位や深さによっては、あえて手術を選んだ方が結果的にきれいに仕上がることもあります。迷ったときは、レーザーありきで考えず、両方の選択肢を提示してくれる医師に相談することをおすすめします。
まとめ:自分のホクロがどちらに向いているか、まず相談を
ホクロの治療は、レーザーと手術のどちらが優れているという単純な話ではなく、部位・大きさ・深さを踏まえた総合判断です。特に人中や体幹部、ひげの生えている部位は、他とは違う視点での説明を受けておくと、治療後の納得感が変わってきます。
気になるホクロがある方は、まず専門医に相談し、ご自身のホクロがどちらの治療に向いているか、判断してもらうところから始めてみてください。
参考文献
- 日本形成外科学会「色素性母斑(ほくろ・母斑細胞母斑・黒子)」jsprs.or.jp
- 日本形成外科学会「ケロイド・肥厚性瘢痕」jsprs.or.jp
- 日本形成外科学会/日本創傷外科学会/日本頭蓋顎顔面外科学会『形成外科診療ガイドライン3 2021年版 創傷疾患』第III編 ケロイド・肥厚性瘢痕診療ガイドライン


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