ニキビ跡(PIE・PIH・瘢痕)の違いと正しい向き合い方|形成外科医が解説

スキンケア・美容医療

ニキビが治っても、その場所に赤み・黒ずみ・凹みが残ってしまう——これが「ニキビ跡」です。

ニキビ跡は一括りにされがちですが、実は性質の異なる3つのタイプがあり、それぞれ自然な経過も、向き合い方も異なります。自分のニキビ跡がどのタイプかを知ることが、適切な対処への第一歩です。

ニキビ跡の悩み
1
赤みは自然に治る?
2
色素沈着への治療方法はあるの?
3
クレーターはもう治らないの?潰すとあとになるって本当?

なぜニキビ跡が残るのか

ニキビ跡は、炎症がどれだけ深く・長く続いたかによって残りやすさが決まります。

軽い炎症であれば、肌のターンオーバー(生まれ変わり)とともに自然に目立たなくなっていきます。しかし炎症が深部にまで及んだ場合、組織の修復過程で色素沈着や組織の欠損が生じ、跡として残ってしまうことがあります

ある研究では、ニキビの凹んだ瘢痕の8割以上が、赤み・黒ずみの段階を経て生じていることが報告されています。つまり、赤みや黒ずみの時期にどう過ごすかが、その先の凹みを防げるかどうかに関わっている可能性があるのです。

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📋 コラム|ニキビを潰すと跡になるって本当?

「早く治したくて潰してしまった」——そんな経験がある方は多いと思います。でも実際、ニキビを自分で潰すと跡が残りやすくなるのは本当のことです。なぜそうなるのか、理由をお伝えします。

跡になりやすい5つの理由
1
炎症が広がる
潰す刺激によって炎症性サイトカイン(炎症を引き起こす物質)がさらに放出され、周囲への炎症が拡大することがあります。
2
圧が真皮(皮膚の深い層)に逃げる
毛穴に加わった圧が外に出る方向と同時に内側にも向かい、真皮のコラーゲンや組織を傷つけることがあります。これが凹みのニキビ跡(瘢痕)につながる重要な一因と考えられています。
3
毛包壁が破れ、内容物が真皮に漏れ出す
毛包の壁が破れると、中の皮脂・角質・アクネ菌が真皮に漏れ出します。体はこれを「異物」として認識し、より強い炎症反応(異物肉芽腫)を起こすことがあります。
4
手指の菌が入り込む
手には多くの常在菌が存在します。潰した創部から菌が入ることで、二次感染が起き炎症がさらに悪化することがあります。
5
表皮のバリアが傷つく
無理に潰すことで皮膚表面の表皮が損傷し、バリア機能が低下します。回復が遅れ、PIE(赤み)やPIH(黒ずみ)も長引きやすくなります。
Dr.オーラより:「どうしても気になって潰したい」という気持ちはよくわかります。そんなときは、自分で潰さずにクリニックを受診してください。面皰圧出(めんぽうあっしゅつ)といって、専用の器具を使って適切な圧力で内容物を排出する処置があります。自分で潰すよりも炎症・傷跡のリスクをはるかに小さくできます。

ニキビ跡の3タイプを知る

ニキビ跡の3タイプ
1
PIE(炎症後紅斑):炎症によって毛細血管が拡張・損傷し、赤みや紫みが残るタイプ。時間経過で自然に薄くなることも多い。
2
PIH(炎症後色素沈着):炎症後にメラニンが過剰産生されて残る茶色いシミ状の跡。紫外線によって悪化しやすい。
3
瘢痕(クレーター・肥厚性瘢痕):真皮まで炎症が達することでコラーゲン構造が変形し、凹凸として残るタイプ。セルフケアでの改善は限定的。
PIE(赤み) PIH(黒ずみ) 瘢痕(凹み)
見た目 赤み・ピンク色 茶色〜黒っぽい色素沈着 皮膚表面の凹み
原因 毛細血管の拡張が残る メラニン色素の過剰沈着 真皮の組織損傷
自然に薄くなるか 半年〜1年程度で薄くなりやすい 半年〜数年かけて徐々に薄くなる 自然な改善はほぼ期待できない
主な対処 紫外線・刺激を避ける 日焼け止め・美白ケア 自費診療が中心

ご自身の鏡を見て、どのタイプに近いか確認してみてください。複数のタイプが混在していることもよくあります。

① PIE(炎症後紅斑)|赤みのニキビ跡

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ニキビが治った後も、その部分が赤く残っている状態です。これは、炎症によって周囲の毛細血管が拡張したまま戻っていない状態と考えられています。

自然経過: 多くの場合、半年〜1年程度かけて徐々に薄くなっていきます。ただし紫外線や物理的な刺激(こする・触るなど)があると長引くことがあります。

できること
1
紫外線を避け、日焼け止めを毎日使う。紫外線があると赤みが長引きやすいため、跡が残っている間は徹底しましょう。
2
患部を触らない・こすらないようにする。物理的な刺激は赤みの長期化につながります。
3
強い炎症が続いている場合は、外用薬で炎症をコントロールすることが土台になります。保険診療の範囲で対応できるケースもあります。

保険診療の範囲でできることは限られますが、強い炎症が続いている場合は外用薬での炎症コントロールが土台になります。

② PIH(炎症後色素沈着)|黒ずみのニキビ跡

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ニキビの炎症によって表皮にメラニン色素が過剰に作られ、茶色〜黒っぽい色素沈着として残った状態です。

自然経過: PIEよりもさらに時間がかかることが多く、半年〜数年かけて徐々に薄くなります。紫外線を浴びると色素沈着が悪化・長期化しやすいため注意が必要です。

できること
1
日焼け止めを毎日使う。PIHは紫外線で悪化・長期化しやすいため、跡が残っている間は特に徹底することが最も重要です。
2
トラネキサム酸などの美白成分を含むスキンケアを補助的に取り入れることも選択肢のひとつです。

③ 瘢痕(はんこん)|凹みのニキビ跡

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炎症が真皮(皮膚の深い層)にまで及び、組織が修復しきれずに凹みとして残ってしまった状態です。PIE・PIHとは性質が大きく異なります。

できること・できないこと
1
保湿・美白ケアや保険診療の外用薬・内服薬では、凹みそのものを改善することは基本的にできません。
2
改善を目指す場合は、フラクショナルレーザーやRFマイクロニードルなどの機器治療が選択肢になります(自費診療・美容クリニックが中心)。
⚠️ 瘢痕(凹み)について、正直にお伝えしたいこと

PIE(赤み)やPIH(黒ずみ)は時間とともに自然に薄くなっていく可能性がありますが、凹みとして残った瘢痕は、自然に元の平らな状態に戻ることはほとんどありません。

これは、皮膚の表面ではなく、真皮という深い層の組織そのものが損なわれているためです。保湿や美白ケアといったセルフケア、保険診療の外用薬・内服薬では、瘢痕の凹みそのものを改善することは基本的にできません。

瘢痕の改善を目指す場合

フラクショナルレーザーやRFマイクロニードルなどの機器治療が選択肢になりますが、これらは自費診療(美容クリニック)が中心です。瘢痕のタイプによって反応しやすいもの・しにくいものがあり、複数回の治療が必要になることも一般的です。

Dr.オーラより:「ニキビ跡は治らない」とお伝えしたいわけではありません。適切な治療によって目立たなくすることは可能です。ただし保険診療の範囲を超えるケースが多いという現実を、まず正しく知っておいていただきたいと思います。

自分でできることと、できないこと

セルフケアでできること・医療に頼ること
自分で
日焼け止めを毎日使う。PIE・PIHどちらも紫外線で悪化・長期化しやすいため、跡が残っている間は特に徹底しましょう。患部を触らない・こすらないことも大切です。
時間を待つ
PIE・PIHは半年〜数年かけて自然に薄くなっていくことが多いです。今あるニキビの炎症をこれ以上増やさないことが、結果的に一番の近道になります。
医療に相談
凹みの瘢痕や、長期間(数年単位)改善しないPIE・PIHは、自費診療を含めた医療的なアプローチが選択肢になります。気になる場合は美容皮膚科で相談してみましょう。

何よりも「予防」が大切

ここまで読んでいただくと、瘢痕(凹み)は一度できてしまうと完全に元通りにすることが難しいことがわかると思います。だからこそ、赤いニキビ・膿のニキビが出た段階で、できるだけ早く炎症を抑えることが何より重要です。

このシリーズでお伝えしてきた、正しいスキンケア外用薬必要に応じた内服薬は、すべて「ニキビ跡を残さないため」という目的にもつながっています。

まとめ

この記事のまとめ
1
ニキビ跡にはPIE(赤み)・PIH(黒ずみ)・瘢痕(凹み)の3タイプがあります
2
PIE・PIHは時間とともに自然に薄くなることが多く、日焼け止めと刺激回避が基本のケアです
3
凹みの瘢痕は自然には改善しにくく、改善を目指す場合は自費診療(美容クリニック)が中心になります
4
最も効果的な対策は、赤いニキビ・膿のニキビが出た段階でできるだけ早く炎症を抑えることです

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参考文献

  1. 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン策定委員会:尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023. 日皮会誌,133(3):407-450,2023.
  2. 乃木田俊辰:座瘡治療. MB Derma,340:18-25,2023.
  3. Tan J, et al. Acne scarring: Pathogenesis and treatment. J Drugs Dermatol,16:567-573,2017.

著者:Dr.オーラ(形成外科医・再建外科医) 参考ガイドライン:日本皮膚科学会ガイドライン2023

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