「脇汗がひどくて毎日制汗剤を何度も塗り直している」
「汗じみが気になって、好きな服が着られない」
——そんな悩みを抱えながらも、
「病院に行くほどではないかな」と思っている方は多いのではないでしょうか。
実は、脇汗(腋窩多汗症)は保険診療で治療できる疾患です。2020年以降、脇汗専用の塗り薬が相次いで保険適用となり、「毎日1回塗るだけ」という手軽な治療が受けられる時代になりました。

この記事では、その代表的な2剤——エクロックゲルとラピフォートワイについて、「何が違うの?どちらを処方してもらえればいい?」という疑問に答えながら形成外科医の立場で解説します。
エクロックゲルとは?

エクロックゲル5%(ソフピロニウム臭化物/科研製薬)は、2020年に発売された日本初の保険適用・脇汗治療外用薬です。
わきに直接塗ることで有効成分が皮膚から浸透して発汗を抑えます。「ゲル」という名前の通りゲル状の薬で、専用アプリケーター付きのポンプボトルタイプです。
ラピフォートワイプとは?

ラピフォートワイプ2.5%(グリコピロニウムトシル酸塩水和物/マルホ)は、エクロックゲルに続いて2022年に発売された「拭く」タイプの薬です。
「ワイプ=拭く」の意味の通り、薬液の染みた不織布でわきを拭いて使います。基本的な作用はエクロックゲルとほぼ同じです。
2剤に共通する仕組み
どちらも、エクリン汗腺が交感神経から受け取る「汗を出せ」という指令をブロックすることで発汗を抑えます。いわばアセチルコリンという神経伝達物質が汗腺の受容体に結合するのを邪魔するイメージです。
どちらも保険適用で処方を受けることができます。
使い方の違い
エクロックゲルは通常の制汗剤と使い方が近く、生活に取り入れやすいのが特徴です。ラピフォートワイプは1袋使い捨てのため旅行や外出先での使用がラクです。
どちらも**使用後はすぐに手を洗ってください。**目に触れると散瞳(瞳孔が開く)が起きることがあります。
効果が出るまでの違い
2剤の作用機序はほぼ同じですが、効果が出るまでの速さにやや差があります。
エクロックゲルは個人差はありますが、効果を実感しはじめるまで約2週間ほどかかります。使い始めの数日間はほとんど変化を感じませんが、塗り続けることで効果が蓄積されます。諦めずに継続することが大切です。
ラピフォートワイプはエクロックゲルよりも効果が出るのがやや早い傾向があります。個人差はありますが、1週間目から効果を実感できるケースも。こちらも使い始めの数日間は変化を感じにくいため継続が重要です。
費用の違い
どちらも保険適用ですが、費用にやや差があります。
※いずれも薬剤費のみの目安です。実際の支払いには診察料・処方箋料・調剤基本料が別途加わります。
副作用・使用できない方
2剤の副作用の内容に大きな違いはありません。
主な副作用
- 皮膚炎(かぶれ・かゆみ・赤み)
- 散瞳(目がまぶしい)
- 霧視(かすんで見える)
- 口渇(口が渇く)
使用できない方
- 閉塞隅角緑内障の方
- 前立腺肥大による排尿障害がある方
- 妊婦・授乳中の方(要相談)
対象年齢に注意
2剤の大きな違いの一つが対象年齢です。
お子さんの多汗症でお悩みの場合、年齢によって選択できる薬が変わりますので、受診時に医師に相談してください。
どちらを選ぶべきか
一概にどちらが優れているとは言い切れません。2剤間の直接比較試験は現時点で存在せず、効果の差は個人差の範囲内です。
「塗る」か「拭く」かの使い勝手で選ぶのが基本です。
※2剤間の直接比較試験は存在しません。最終的には医師と相談のうえ、使い勝手で選ぶことが推奨されます。
持ち運びのしやすさではラピフォートワイプが便利です。コスト面ではエクロックゲルがやや有利です。効果が出るまでの早さを重視する方はラピフォートを試してみるのもよいでしょう。
まずは市販品から試してみたいという方は、以下の記事も参考にしてみてください。
→市販のデオドラントの選び方と売れどころをピックアップした記事
→男性に特化したデオドラント商品の記事
まとめ
脇汗で日常生活に支障を感じている方は、ぜひ一度皮膚科・形成外科に相談してみてください。「病院に行くほどではない」と思っているかもしれませんが、保険の塗り薬でかなり改善する方は多くいらっしゃいます。問診だけで診断できることがほとんどで、受診のハードルは低くなっています。
→ わきが・脇汗の治療法全体を見たい方はこちら:わきがの原因と治し方|完全ガイド
参考文献
- 藤本智子ほか. 原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版. 日皮会誌. 2023;133:3025.
- 藤本智子. 抗コリン外用薬を用いた腋窩多汗症治療. 形成外科. 2023;66(2):145-151.
- Yokozeki H, Fujimoto T, Abe Y, et al. A phase 3 study of 5% sofpironium bromide gel in Japanese patients with primary axillary hyperhidrosis. J Dermatol. 2021;48:279-288.
- Fujimoto T, Kawahara K, Yokozeki H. Epidemiological study of primary focal hyperhidrosis in Japan. J Dermatol. 2013;40:886-890.
- マルホ株式会社. 脇汗治療の総合情報サイト. https://www.maruho.co.jp/kanja/wakiase/

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