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「制汗剤では不十分。」
「塗り薬を試したけれど効果が物足りないし、面倒くさい。」
「ボトックスって、どんな治療なんだろう」
——脇汗でお悩みの方から、こうした声をよく聞きます。
わき汗(腋窩多汗症)のボトックス注射は、2012年から保険適用となった確立された治療法です。「美容整形」のイメージが先行しがちですが、医学的根拠のある多汗症治療として広く行われています。
この記事では、
まず確認|脇汗(多汗症)とわきが(腋臭症)は別の疾患
「脇の悩み」と一括りにされがちですが、脇汗と臭いの問題は発生する汗腺が異なる別の疾患です。ボトックスの効果を正しく理解するために、まず整理しておきましょう。
ボトックスはエクリン汗腺からの発汗を抑える治療です。 わきがそのものを治す薬ではありませんが、脇の湿潤環境が改善されることで皮膚常在菌の繁殖が抑えられ、においが軽くなったと感じる方もいます。 多汗症とわきがを両方抱えている方には特に向いている治療です。
原発性腋窩多汗症とは
脇汗が多い状態のうち、甲状腺疾患・薬剤性など明確な原因がないものを原発性腋窩多汗症と呼びます。
「仕事に集中できない」「着る服の色が限定される」「人前で腕を上げられない」といった深刻なQOLの低下が多くの患者さんで報告されています。
診断基準
以下の条件を満たす場合、原発性腋窩多汗症と診断されます。
ボトックス注射の仕組み
ボトックス(A型ボツリヌス毒素)は、交感神経終末からのアセチルコリン放出をブロックすることで、エクリン汗腺への「汗を出せ」という指令を遮断します。
汗腺そのものを取り除くわけではないため、効果は永続的なものではありませんが、ダウンタイムなく繰り返し使える低侵襲な治療です。
ガイドラインでの位置づけ
原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版では、外用抗コリン薬(エクロックゲル・ラピフォートワイプ)が第1選択薬とされており、ボトックスは外用薬で効果が不十分な重症例に対する第2選択薬として位置づけられています。
→外用抗コリン薬に関する説明はこちらの記事を参照ください。
効果・持続期間
効果が出るまで
注射後2〜7日程度で発汗の減少を実感しはじめる方が多いです。
効果の持続
1回の投与で約4〜9か月効果が持続します(個人差あります)。その後は徐々に発汗が戻るため、繰り返し注射が必要です。
繰り返し打っても大丈夫?
長期使用データでも安全性が確認されています。
再投与後の満足度調査でも「非常に満足」66.7%+「比較的満足」33.3%=全員が満足と回答。「効果がなくなったら3回目も受けたいか」という問いには88.9%が「ぜひ受けたい」と答えています(大嶋雄一郎, 皮膚科 2024)。
「ずっと打ち続けて体に悪くないの?」という質問をよく受けますが、長期データを見る限り安全性への懸念は少ないと考えられます。繰り返すうちに効果が安定・延長する傾向もあります。
保険適用と費用
保険適用の条件
2012年11月より、「重度原発性腋窩多汗症」に対してボトックス注射が健康保険適用となりました。
保険で受けるためには以下の条件をすべて満たす必要があります。
費用の目安
保険診療の実務的な注意点
保険診療でボトックスを使用する場合、製剤をメーカーから取り寄せるため原則初診当日には注射できません。 製剤の到着に通常3〜7日かかるため、初診で診断・予約→後日来院して注射、という2回受診が必要になります。
美容皮膚科・美容外科での自費診療では製剤を常備しているクリニックが多く、当日施術が可能なケースがほとんどです。
注射の実際
施術の流れ
一般的な診療の流れを図にしてみました。あくまでも参考程度でお願いします。
▶ 保険診療の場合(2回受診が必要)
▶ 自費診療の場合(当日施術が多い)
効果を実感しはじめるまでの目安は注射後2〜7日程度です。
施術時間
注射自体は片脇約2〜3分・両脇で5分程度と非常に短時間で終わります。
痛みについて
30G(極細)の針を使用するため痛みは最小限です。さらに注射部位の近傍にバイブレーターを当てながら施注することで、ゲートコントロール理論により痛みをかなり軽減できます(藤田研也, 形成外科 2023)。
クーリングの他にもエムラクリーム(表面麻酔)を使用するクリニックもあります。
注射部位・打ち方
片脇に約15〜20か所、1〜2cm間隔でジグザグにマーキングし、皮内〜皮下に均等に注射します(片脇50単位、両脇で合計100単位が標準的な使用量です)。医師によってはもう少し細かく注射することもあります。
副作用と注意点
主な副作用
ボトックス注射の重篤な副作用は非常にまれです。注意が必要なものとしては以下があります。
使用できない方・避妊の規定
避妊の規定は見落とされやすいポイントです。妊娠を希望している方は施術前に必ず医師にお伝えください。
クリニックを探すなら
わき汗ボトックスの対応クリニックは、キレイパスやくまポンから全国で検索・比較・予約できます。保険対応クリニック・自費クリニック、それぞれの条件で絞り込めるので、ぜひ活用してみてください。
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よくある質問
エクロックゲル・ラピフォートワイプは「毎日続ける外用薬」、ボトックスは「4〜9か月に1回の注射」です。外用薬で効果が不十分な場合や、毎日塗る手間を省きたい場合にボトックスへのステップアップを検討します。
再投与した患者の55.6%が春(3〜5月)に受けているというデータがあります(大嶋雄一郎, 皮膚科 2024)。夏に向けて薄着が増える前に受けるのが効果的です。
ダウンタイムはほぼありません。当日から通常通りの生活が可能です。
ボトックスはわきがそのものを治す薬ではありません。ただし発汗量が減ることで脇の湿潤環境が改善され、においが軽くなったと感じる方もいます。わきがの根治には手術(皮弁法)が最も確実な方法です。
まとめ
- ① わき汗ボトックスは、エクリン汗腺への神経伝達を遮断し、4〜9か月程度発汗を抑える治療です。
- ② 汗が減ることで、においの間接的な軽減も期待できます。
- ③ 重症の原発性腋窩多汗症では保険適用となり、3割負担で両わき約1.8〜2.2万円が目安です。
- ④ 保険診療では製剤取り寄せのため、初診当日に注射できず、後日の来院が必要になる場合があります。
- ⑤ 自費診療では当日施術可能なクリニックも多く、費用は2〜3万円台からが目安です。
- ⑥ 注射自体は5分程度で、ダウンタイムはほとんどありません。
- ⑦ 繰り返し投与の満足度が高く、長期的な安全性も比較的確立されています。
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→ わきが・脇汗の治療法全体を見たい方はこちら:わきがの原因と治し方|完全ガイド
参考文献
- 藤田研也. ボトックスを用いた原発性腋窩多汗症治療. 形成外科. 2023;66(2):152-158.
- 大嶋雄一郎. ボツリヌス毒素による多汗症治療. 皮膚科. 2024;6(3):244-249.
- 藤本智子ほか. 原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版. 日皮会誌. 2023;133:3025.
- Heckmann M, Teichmann B, Pause BM, et al. Amelioration of body odor after intracutaneous axillary injection of botulinum toxin A. Arch Dermatol. 2003;139:57-59.
- Lynch OE, Aherne T, Gibbons J, et al. Five-year follow-up of patients treated with intra-dermal botulinum toxin for axillary hyperhidrosis. Ir J Med Sci. 2020;189:1023.
- Berthin C, Maillard H. Duration of Efficacy Increases with the Repetition of Botulinum Toxin A Injections in Primary Axillary Hyperhidrosis: A 15-year Study in 117 Patients. Acta Derm Venereol. 2019;99:1237.
- Fujimoto T, Kawahara K, Yokozeki H. Epidemiological study of primary focal hyperhidrosis in Japan. J Dermatol. 2013;40:886-890.


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