健診で乳児血管腫(いちご状血管腫)を指摘されたとき、多くの場合「自然に小さくなっていきますから、様子を見ましょう」という説明を受けるかと思います。「いちご状血管腫はいつ消える?増殖期・退縮期の経過と自然な見通し」でお伝えしたとおり、実際に多くのケースでは時間をかけて目立たなくなっていきます。
ただ、「様子を見る」と言われても、どこまでが様子を見ていい範囲で、どこからが病院に相談すべきラインなのか、はっきりしないまま不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、乳児血管腫において受診を考えたほうがよいタイミングと、治療の対象になりやすいケースについて、できるだけ具体的にお伝えします。
多くの場合は「経過観察」で問題ありません
まず大前提として、乳児血管腫の多くは、整容面(見た目)の問題が中心であり、機能的な問題を伴わない場合には、積極的な治療をせずに自然な経過を見ていく、という方針がとられます。これは医師が手を抜いているわけではなく、自然に縮んでいく経過をたどることが多いという特性を踏まえた、医学的に妥当な判断です。
ですので、「治療しないと言われた」「様子を見ましょうと言われただけだった」という場合、それ自体は心配する必要のないことがほとんどです。
こんなときは医師に相談してほしい
一方で、次のようなケースでは、経過観察だけでなく、治療を含めた相談が必要になることがあります。
できている場所が、目・鼻・口の周りなど、機能に関わる部位である場合
まぶたの周りにできた血管腫が大きくなると、まぶたを押し上げたり塞いだりすることで、視力の発達に影響を及ぼす可能性があります。赤ちゃんの視機能は生後の数年間で大きく発達していくため、この時期に片方の目がうまく使えない状態が続くと、弱視(じゃくし、見る力がうまく育たない状態)につながるリスクがあるとされています。同様に、鼻の先端や、耳、口の周りにできた場合も、将来的な機能や見た目への影響を考えて、早めの相談が勧められます。

呼吸や哺乳に影響が出ている場合
のどや気道の近くにできた血管腫が大きい場合、呼吸のしづらさにつながることがあります。また、口の周りや中にできた場合は、おっぱいやミルクを飲む動作(哺乳)に影響することもあります。
急速に大きくなっている場合
増殖期には大きくなることがある程度想定されていますが、その中でも特に短期間で急激に変化している場合は、念のため早めに相談していただくのが安心です。
表面が傷のようになっている、出血している場合(潰瘍化)
血管腫の表面の皮膚が薄くなり、ただれたり傷になったりすることを潰瘍化と呼びます。特に唇や肛門周囲、関節の内側など、こすれやすい場所にできた血管腫では、潰瘍化が起こりやすいとされています。潰瘍化すると痛みを伴うことがあり、感染症のリスクも上がるため、見つけたら早めの受診が望ましいとされています。
どの科を受診すればいいの?
健診で指摘された場合は、まず小児科の先生に相談することになりますが、上記のようなサインがある場合や、治療の選択肢についてより詳しく相談したい場合は、形成外科や、皮膚科、小児科で乳児血管腫の診療経験がある医師への相談が選択肢になります。
施設によって対応できる治療内容が異なるため、可能であれば乳児血管腫の診療実績がある病院やクリニックを選んでいただくと、相談がスムーズに進みやすいです。
潰瘍化してしまったときの対応
すでに潰瘍化(傷のようになってしまった状態)が起きている場合、まず大切なのは患部を清潔に保ち、刺激から保護することです。創傷被覆材(傷を保護する専用の素材)を使ったケアが行われることが多いです。
大きく膨らんだ乳児血管腫は傷になるリスクが高いです。背中やお尻など擦れやすい場所、かぶれやすい場所にあると表面が傷ついてしまうことがあります。

潰瘍化を伴う乳児血管腫では、治療を急いだほうがよいケースも多いため、自宅でのケアだけで様子を見続けるのではなく、早めに医師に相談していただくことをおすすめします。
治療を選ぶ・選ばないは、ご家族の判断も大切です
ここまで「治療が必要になりやすいケース」をお伝えしましたが、最終的に治療を行うかどうかは、医学的な必要性だけでなく、ご家族がどのように考えるかも踏まえて決めていくものです。
機能的なリスクがある場合は治療が強く勧められますが、見た目の問題が中心のケースでは、「自然な経過を見守る」という選択も、「早めに治療して変化を抑えたい」という選択も、どちらも誤りではありません。「いちご状血管腫の治療法は?プロプラノロール内服とレーザーの選び方」では、実際にどのような治療方法があるのか、それぞれの特徴や気をつけたいポイントについて詳しくお伝えします。
まとめ
乳児血管腫の多くは経過観察で問題ありませんが、目・鼻・口など機能に関わる部位にできている場合、呼吸や哺乳に影響している場合、急速に大きくなっている場合、潰瘍化や出血が見られる場合には、早めに医師に相談することが勧められます。受診先としては、小児科に加えて、形成外科や皮膚科も選択肢になります。
「様子を見ましょう」と言われたあと、何を基準に次の受診を考えればいいのか分からず不安、という声をよく伺います。今回挙げたようなサインがあれば、健診の時期を待たずに相談していただいて構いません。迷ったときに相談できる、というだけでも安心材料になるはずです。

参考文献
- 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業「難治性血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管奇形・リンパ管腫症および関連疾患についての調査研究班」. 血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管奇形・リンパ管腫症 診療ガイドライン2022(第3版). 2023.


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