ニキビが治っても残る「凸凹」、諦めるしかないのでしょうか
前回の記事では、ニキビが治ったあとの赤みや色素沈着に対するケミカルピーリング・IPLについてお話ししました。今回は、もう一歩踏み込んだお悩みである、**皮膚がへこんでしまう「クレーター」状の凸凹(萎縮性瘢痕)**について取り上げます。
「ニキビ跡専用のレーザーがある」「フラクショナルレーザーで跡が消える」といった情報を目にしたことがある方も多いかもしれません。今回は、実際にどのような治療なのか、何ができて何ができないのかを、正確にお伝えしたいと思います。

結論:目立ちにくくすることはできますが、完全に元通りにする治療ではありません
最初にお伝えしなければならない、とても大切なことがあります。それは、現時点で、ニキビ跡の凸凹を跡形もなく消し去る治療法は存在しないということです。瘢痕(はんこん、傷あと)は皮膚が完全に修復されなかった結果として残る組織であり、どんな治療を行っても「完全に元の皮膚に戻す」ことは現在の医療技術ではできません。

この点を誤解してしまうと、治療への期待が大きくなりすぎてしまい、思うような結果が得られなかったときに医療不信につながってしまう恐れがあります。フラクショナルレーザーやRFマイクロニードルは、あくまで**「目立ちにくくする」ための補助的な治療**として位置づけられています。ガイドライン上も、フラクショナルレーザーは推奨度C1(行うよう勧められる)とされている一方、RFマイクロニードルはガイドラインでの評価が定まっていない治療ですが、実際の臨床では広く用いられています。
決して悲観していただく必要はありません。「完全には消えない」という前提を正しく理解したうえで、「どこまで目立たなくできるか」という現実的な目標を医師と共有しながら治療に取り組んでいただくことが、満足度の高い結果につながると考えられています。
フラクショナルレーザーとは
フラクショナルレーザーは、皮膚に微小な点状のレーザー光を無数に照射する治療法です。照射された点(マイクロサーマルゾーン)の周囲には正常な皮膚が多く残されるため、傷の治りが早く、安全性が高いことが特徴とされています。この照射によって生じる創傷治癒の過程で、コラーゲンなどの生成が促され、皮膚の凸凹が徐々に改善していくと考えられています。
フラクショナルレーザーには、大きく分けて次の2種類があります。
- Non-ablative(非蒸散型)フラクショナルレーザー:波長1320〜1550nm程度を使用し、皮膚を蒸散させずに熱凝固させるタイプです。かさぶた(痂皮)がほとんどできず、施術後の見た目の負担が少ないとされています。
- Ablative(蒸散型)フラクショナルレーザー:波長1927〜10600nm程度(CO2レーザーなど)を使用し、皮膚をごく小さな範囲で蒸散させるタイプです。かさぶたが7日程度でき、Non-ablativeよりダウンタイムはありますが、効果も大きいとされています。
このほか、ピコ秒レーザーをフラクショナル照射する治療(ピコ秒フラクショナルレーザー)もあり、非常に短いパルス光による特殊な作用で組織の再構築を促すとされています。
フラクショナルレーザーにはいくつも種類があり、それぞれ得意な瘢痕のタイプが異なります。どのタイプが適しているかは、瘢痕の深さや形状、肌質によって医師が判断するものですので、「このレーザーが一番効く」と決めつけず、診察のうえで相談していただくのがよいかと思います。
RF(高周波)・RFマイクロニードルとは
RF(radiofrequency:高周波)は、電気的なエネルギーを利用して皮膚の深い部分(真皮や皮下)を加熱する治療機器です。人体に電流を流すことで生じる熱(ジュール熱)や、電界の変化によって組織を加熱する方式(誘電加熱)が用いられています。もともとはたるみやシワの治療に主として使われてきた技術ですが、これを針(マイクロニードル)状の電極を用いて皮膚に点状に照射する「フラクショナルRF」「RFマイクロニードル」と呼ばれる治療機器もあります。
RFはレーザーのように光を蒸散させるのではなく、電気的な熱によって組織を加熱する点が特徴です。レーザーに比べて皮膚表面への負担が少ない傾向があるとされ、比較的侵襲の少ない治療として、軽度の瘢痕や肌質の変化が主な悩みである場合に選択されることがあります。
▶︎コラムにしたけど、大事な話
どちらが選ばれるのか(あくまで一般的な傾向として)
「フラクショナルレーザーとRFマイクロニードル、どちらがいいのか」という疑問をお持ちの方も多いと思いますが、これは患者さんの瘢痕の状態を診察したうえで、医師が判断することです。あくまで一般的な傾向としてですが、次のような報告があります。
- 重度のニキビ跡や、隆起した肥厚性瘢痕には、CO2フラクショナルレーザーによる、より積極的な点状治療が向いていると考えられています
- 軽度のニキビ跡や、色味の違いだけが気になる比較的目立たない瘢痕には、より侵襲の少ないRFフラクショナル治療が選ばれる場面もあるとされています
| 項目 | フラクショナルレーザー(CO2など) | RFマイクロニードル |
|---|---|---|
| 加熱の仕組み | レーザー光による点状の蒸散・熱凝固 | 針状電極からの高周波(電気)による点状の加熱 |
| 向いているとされる瘢痕 | 比較的重度のニキビ跡・肥厚性瘢痕 | 軽度のニキビ跡、色味の違いが主な悩みの場合 |
| ダウンタイム | かさぶたが数日〜1週間程度できることが多い | 比較的軽度とされる |
| 治療回数の目安 | 2〜3回程度、1〜3か月ごと | 医師の判断により複数回 |
※上記は一般的な傾向であり、実際にどちらが適しているかは瘢痕の状態を診察した担当医が判断します。
実際の治療の流れ
いずれの治療も、1回で完結するものではなく、複数回の施術を重ねていくことが基本です。
- 施術の際は局所麻酔クリームをあらかじめ塗布し、30分以上密封して麻酔を効かせてから行うことが一般的です
- 施術後の痛みは長くても2時間程度で、通常は1時間以内に自然に和らいでいくとされています
- Ablativeフラクショナルレーザーでは、施術後7日程度でかさぶたが自然にはがれます
- 治療間隔は1〜3か月ごと、治療回数は2〜3回程度を目安とすることが多いとされていますが、瘢痕の状態や機器によって医師が個別に判断します
- 効果は施術後すぐに現れるのではなく、数か月かけて創傷治癒の過程でコラーゲンなどが増えていくことで、ゆっくりと現れていくとされています
知っておいていただきたい注意点

提供:マルホ株式会社
- アイスピック型の瘢痕には、フラクショナルレーザーの効果が限定的とされています。 細く深い「アイスピック型」と呼ばれる瘢痕は、ほかの形状の瘢痕に比べて改善が得にくいと報告されています。瘢痕の形状によって適した治療は異なりますので、担当医とよく相談してください。
- 炎症後色素沈着のリスクがあります。 施術後は肌がデリケートな状態になっているため、紫外線対策や保湿を徹底することが求められます。
- 「跡を消す」「皮膚を再生する」といった宣伝文句には注意が必要です。 現時点でそのような治療法は存在しないとされており、過度な期待を抱かせる表現には慎重になっていただくことをおすすめします。
まずやるべきこと
ニキビ跡の凸凹が気になる場合、まずは皮膚科・形成外科などで診察を受け、瘢痕の状態(深さ・形状・広がり)を確認してもらうことが第一歩です。診察の際は、次のような点を担当医に確認してみるとよいでしょう。
「跡を完全に消したい」という気持ちはとても自然なものですが、「目立ちにくくする」ことを現実的なゴールとして共有できると、治療への納得感も高まりやすいと考えられています。
よくある質問
ニキビ跡の治療は、根気と時間が必要な治療です。「絶対に消えます」とお伝えすることはできませんが、多くの場合、適切な治療を重ねることで凸凹は目立ちにくくなっていきます。まずは現状を正しく知ることから、一緒に始めていただければと思います。
このシリーズの次の記事
- →ニキビ跡(PIE・PIH・瘢痕)の違いと正しい向き合い方|形成外科医が解説
- →ニキビの赤み・跡が気になる方へ ― ケミカルピーリングとIPLの正しい理解
- →ダーマペンとサブシジョン、ニキビ跡治療の選択肢を知る
参考文献
- 宮田成章:RFおよびフラクショナルレーザー.MB Derma, 321:27-33, 2022.
- 中野俊二:フラクショナルレーザー治療.MB Derma, 340:93-99, 2023.
- 石井龍之,貴志和生:フラクショナルレーザーと瘢痕治療の現状と課題.皮膚科, 8(6):450-452, 2025.
本記事はDr.オーラ(形成外科医・再建外科医)が医学文献をもとに執筆しています。個別の症状については医療機関でご相談ください。


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