
ニキビの「赤み」や「跡」、市販薬だけでは限界を感じていませんか
これまでのシリーズでは、ニキビの原因や保険診療でできる外用薬・内服薬による治療を中心にお話ししてきました。
こうした「治ったあとに残るサイン」に対して、保険診療の外用薬・内服薬に加えて選択肢となるのが、ケミカルピーリングやIPL(intense pulsed light、光治療の一種)といった美容医療です。
結論:ケミカルピーリングとIPLは、ニキビ治療の”補助的な選択肢”です
先にお伝えしておきたいのは、
特に炎症を抑える必要がある活動期のニキビ治療においては、これらの外用薬・内服薬が治療の土台になります。日本皮膚科学会の尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023においては、ケミカルピーリング・IPLともに推奨度C1(行うよう勧められる)に位置づけられており、
一方で、炎症が落ち着き、皮疹の新生を防ぎながら肌状態を維持していく維持療法の段階においては、位置づけが少し変わってきます。
ケミカルピーリングを定期的に取り入れることで、外用薬の使用頻度や種類を見直せる場合があると考えられており、担当医の判断によっては、
「これさえ受ければニキビが治る」というものではありませんが、治療の段階に応じて位置づけが変化していく治療である、というイメージを持っていただくとよいかと思います。

ケミカルピーリングとは
ケミカルピーリングは、酸性の薬剤を皮膚に塗布して古い角質を意図的に剥離させる治療法です。使用する薬剤の種類や濃度によって剥離の深さが異なり、深くなるほど効果が期待できる一方で、色素沈着や瘢痕といったリスクも高くなると報告されています。
ニキビ治療でよく用いられる薬剤には、次のようなものがあります。
ケミカルピーリングを繰り返すことで、表皮と真皮のリモデリングが促進され、肌質の変化に役立つと考えられています。活動期のニキビには、やはり外用薬・内服薬による炎症のコントロールが基本になります。
ただ、皮疹が落ち着いたあとの維持療法の段階では、ケミカルピーリングを定期的に取り入れることで、外用薬に頼りすぎずに肌状態を保てるケースもあると感じています。
IPLとは
IPL(Intense Pulsed Light)は、キセノンフラッシュランプを光源とする治療機器で、レーザーが単一波長であるのに対し、IPLは広い波長帯の光を発振するという特徴があります。色素性病変・血管性病変の改善やスキンリジュビネーション(肌質改善)など、幅広い用途に使われています。
ニキビ治療との関わりでは、
33例の尋常性痤瘡のPIEに対してIPLの効果を検討した報告では、8割の症例で改善効果が得られたとされています。IPLによる非侵襲的な治療は、施術後にできるマイクロクラスト(軽いかさぶたのようなもの)もQスイッチレーザーで生じる痂皮に比べて微細で目立ちにくいとされ、治療後の見た目を気にする方に受け入れられやすい治療とされています。
なお、IPLは機器によって波長や照射時間、冷却温度などの設定が異なるため、担当医が患者さんの肌状態に合わせて設定を調整しながら行うものです。
実際の治療の流れ

どちらの治療も、一度で完結するものではなく、複数回の施術を重ねていくことが基本です。
- ケミカルピーリングは、皮膚の状態や適応・禁忌を確認したうえで薬剤を塗布し、一定時間後に中和・洗浄を行います。施術後は保湿と紫外線対策を徹底することが求められます。
- IPLは、1〜3か月のインターバルで3〜5回程度の治療を行うことで効果を実感しやすいとされています。治療中は経過を写真で記録しながら、色調や肌質の変化を確認していくのが一般的な流れです。
いずれも、治療を担当する医師が肌の状態を都度評価しながら、間隔や設定を調整していくものですので、
治す、というよりは「良い状態を維持する」ことが目的です。
知っておいていただきたい注意点

- 短いインターバルでの過度な施術は避けるべきとされています。 IPLを短い間隔や高出力で繰り返すと、熱傷を繰り返しているのと同じような状態になり得ると指摘されています。
- 色素沈着のリスクがあります。 ケミカルピーリングは濃度が高くなるほど、IPLも設定によっては、炎症後色素沈着を起こす可能性があるとされています。
- 肝斑がある場合は特に注意が必要です。 軽度の肝斑がニキビ跡の色素沈着と混在していると見分けがつきにくく、光治療によって肝斑がかえって顕在化することがあると報告されています。心当たりのある方は事前に医師に伝えることをおすすめします。(肝斑に関して詳細を書いた記事がこちらになります。)
- 施術後の保湿と遮光は治療効果と同じくらい重要です。 湿疹や乾燥がある状態での施術は炎症後色素沈着のリスクを高めるとされており、日常的なスキンケアも治療の一部と考えられています。(施術後はフェイシャルパックを利用するなどして、肌を休めることをお勧めします。美容施術後に使用したい高級パックや、日焼け後に使用する鎮静を目的としたパックなど様々な商品を分析・解説しています。)
まずやるべきこと
赤みや跡が気になっても、
炎症を早期にコントロールできれば、跡が残りにくくなると考えられています。そのうえで、
という場合に、ケミカルピーリングやIPLを選択肢として医師に相談してみるとよいでしょう。ご自身の肌の状態(肝斑の有無、色素沈着の起こしやすさなど)によって適した薬剤や設定は変わってきますので、自己判断での市販ピーリング剤の多用などは避け、担当医と相談しながら進めていただくことをおすすめします。
- 1 ケミカルピーリングとIPLは、いずれもガイドラインで推奨度C1に位置づけられる、保険診療を補う治療です。
- 2 ケミカルピーリングは角質の剥離による肌質改善、IPLは炎症後紅斑(赤み)の改善が中心です。
- 3 どちらも複数回の施術が前提で、色素沈着などのリスクもあるため、自己判断せず医師の管理のもとで進めることが大切です。
- 4 まずは炎症そのものの治療を継続することが、ニキビ跡を残さないための一番の近道です。
ケミカルピーリングもIPLも「魔法のような一発治療」ではなく、根気強く続けていただく治療です。赤みや跡が気になるお気持ちはよくわかりますが、まずは炎症を落ち着かせることが跡を残さない一番の近道だと感じています。焦らず、担当医と二人三脚で取り組んでいただければと思います。
このシリーズの次の記事
- →ニキビの外用薬|処方された薬を正しく使うために知っておきたいこと
- →ニキビ跡(PIE・PIH・瘢痕)の違いと正しい向き合い方|形成外科医が解説
- →ダーマペンとサブシジョン、ニキビ跡治療の選択肢を知る
参考文献
- 角田加奈子:IPL治療器による美容皮膚医療について.MB Derma, 328:73-81, 2022.
- 白壁聖亜,白壁征夫:Chemical Peelingの適応と使用薬剤.MB Derma, 353:132-136, 2024.
- 木村有太子:座瘡瘢痕治療の”あと一歩”.MB Derma, 348:234-241, 2024.
本記事は形成外科医である僕が医学文献をもとに執筆しています。個別の症状については医療機関でご相談ください。


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