※この記事にはPRを含みます。

前編では、「シミ」という言葉の裏に複数の異なる疾患が混在していることを解説しました。
後編では、もう一歩踏み込みます。
シミ治療を受けている方から、こうした声を聞くことがあります。
では、なぜ治療しているのに思うような結果が出ないのでしょうか。
その理由は、必ずしも「レーザーが弱い」「回数が足りない」といった機器の問題だけではありません。
そもそもシミの種類と治療法が合っていないこともあれば、肝斑などが混在していて、先に肌の状態を整えた方がよいケースもあります。また、治療後に起こる炎症後色素沈着を「シミが悪化した」と感じていることもあります。
つまり、シミ治療では何をするかだけでなく、何に対して、どんな順番で治療するかが大切です。
この記事では、
シミは「1回で消える」ものではない
たとえば老人性色素斑は、Qスイッチレーザーやピコ秒レーザーなどのスポット照射がよく効く代表的なシミです。病変によっては1回の治療でかなり目立たなくなることもありますが、濃さ・大きさ・深さなどによっては追加治療が必要になることもあります。
そして、治療直後にきれいに見えても、それで経過が終わるとは限りません。
レーザー照射後には赤みや痂皮が生じることがあり、その後に**炎症後色素沈着(PIH)**が出て、一時的に治療前より濃く見えることがあります。
つまり、「レーザーをしたのに濃くなった」=「治療に失敗した」とは限りません。時間とともに薄くなるPIHなのか、病変そのものが残っているのか、別の色素斑が混在しているのかを見極める必要があります。
IPL(光治療)は、顔全体に複数の色素斑がある場合などに使いやすい治療ですが、スポットレーザーとは目的が異なり、複数回の治療を前提とすることが一般的です。
刺激によって肝斑が目立ちやすくなる可能性があるため、IPLやレーザーを単純に繰り返すのではなく、まず診断と肌の状態を見直すことが重要です。
レーザートーニングも肝斑に対する選択肢のひとつですが、色素脱失や再燃などの問題があり、すべての人に行う治療ではありません。
シミ治療で大切なのは、「1回で消えるか、消えないか」だけで判断しないこと。
どの種類のシミなのか。
今見えている色は治療対象そのものなのか、それともPIHなのか。
選んでいる治療法が、そのシミに合っているのか。
思うような効果が出ないときこそ、回数を増やす前に一度そこを見直すことが大切です。
肝斑の治療、IPLとレーザートーニングの違い、またスポット照射とトーニングの違いについては、別記事でも詳しく解説しています。

「治療を続けているのに効果が出ない」ときに考えたい3つのこと
その場合は、単純に回数や出力の問題ではなく、治療の前提そのものを見直した方がよいことがあります。主に考えたいのは、次の3点です。
理由①:診断が合っていない
前編でもお伝えしたように、
たとえばADM(後天性真皮メラノサイトーシス)は、表皮のシミとは治療の考え方が異なります。IPLやトーニングだけで十分な改善が得られないことも多く、真皮まで届くレーザー治療が中心になります。
一方で、肝斑が混在している肌に対して、老人性色素斑と同じ感覚で強く照射すると、かえって悪化することがあります。
つまり、**「どのシミに、どの治療を当てているのか」**がずれていると、治療を続けても結果が出にくくなります。
理由②:肌の背景にある炎症や刺激が残っている
もうひとつ大切なのが、皮膚の土台です。
特に肝斑や炎症後色素沈着では、肌の背景に炎症や刺激が残っていることがあります。強い摩擦、過度なスキンケア、慢性的な紫外線曝露などは、その状態を長引かせる要因になります。
治療だけを重ねるのではなく、**「肌が反応しやすい状態になっていないか」**を見直すことが重要です。
理由③:治療の順番が合っていない
シミ治療では、何をするかだけでなく、どんな順番で進めるかも大切です。
特に肝斑が疑われる症例や、炎症が強い肌では、いきなり機器治療を重ねるよりも、先に紫外線対策やスキンケア、必要に応じて外用・内服などで肌の状態を整える方がよいことがあります。
その土台ができていないまま機器治療を進めると、効果が不十分だったり、PIHなどの合併症につながったりすることがあります。

では、背景の炎症を抑えるために何ができるのでしょうか
特に肝斑や炎症後色素沈着では、機器治療そのものだけでなく、肌の背景にある刺激や炎症を減らすことが重要です。
派手な治療ではありませんが、日々のスキンケアや生活習慣を整えることが、結果的に治療効果を支える土台になります。
摩擦をできるだけ減らす
強い洗顔、タオルでのこすり拭き、過度なマッサージ、コットンでの強いパッティングなどは、皮膚への機械的刺激となり、色素沈着を長引かせる要因になることがあります。特に肝斑では、こうした刺激が悪化因子のひとつと考えられています。
洗顔は泡で包むようにやさしく行う。タオルは押さえるように使う。スキンケアはこすらず、手のひらでなじませる。こうした小さな工夫だけでも、肌への負担を減らせることがあります。
紫外線対策を毎日の習慣にする
紫外線は、どのタイプの色素沈着にとっても重要な悪化因子です。治療中だけでなく、治療後にPIHが残っている時期にも、紫外線曝露は色調を長引かせる原因になります。
そのため、日焼け止めは治療を受ける日だけではなく、普段から継続して使うことが大切です。これは「できればやった方がいい」というより、治療効果を保つための基本と考えてよいでしょう。
日焼け止め選びについては、肌へのやさしさを重視したものから、機能性の高い製品までさまざまあります。詳しくは、クリニック専売の日焼け止めや、市販の日焼け止めの選び方も参考にしてください。
必要に応じてトラネキサム酸内服を検討する
トラネキサム酸は、特に肝斑で用いられることの多い内服薬です。
もともとは止血薬として使われる薬ですが、肝斑ではメラノサイトを活性化させる経路や、炎症・血管系の反応に関わるシグナルを抑えることが期待されています。つまり、色素だけでなく、背景にある炎症のコントロールにも関わる可能性がある薬です。
ただし、すべての色素斑に必要なわけではありませんし、血栓症の既往などによっては注意が必要です。自己判断で使うのではなく、医師と相談しながら適応を見極めることが大切です。
保湿でバリア機能を支える
肌のバリア機能が低下していると、わずかな刺激にも反応しやすくなり、色素沈着が長引くことがあります。特に肝斑では、病変部のバリア機能低下が指摘されています。
高価な化粧品である必要はありません。まずは、しみたり赤くなったりしにくい製品を無理なく続けることが大切です。成分としては、セラミドなど保湿・バリア機能を意識したものも選択肢になります。詳しくは、セラミド配合化粧水の選び方も参考になると思います。
土台を整えることが、結果的には近道になる
シミ治療では、つい「次はどの機械を使うか」に意識が向きがちです。
しかし、背景にある炎症や刺激が残ったままでは、治療を重ねても思うような結果につながらないことがあります。
摩擦を減らすこと、紫外線から守ること、必要に応じて内服や外用を取り入れること、そして保湿で肌の土台を整えること。

日頃のケアが治療効率を上げる
日頃のスキンケアや治療前の準備を丁寧に行うことで、その後の機器治療がどの程度うまくいくのか。これを「シミ治療全般」で直接証明した質の高い研究は、まだ十分ではありません。
僕自身も臨床では、肌の状態を整えてから治療に進んだ方が、経過を追いやすいと感じる場面があります。
ただし、これはすべての患者さん、すべてのシミに当てはまる「絶対的なルール」ではありません。
治療前に診断を確認し、刺激や炎症を減らし、必要な準備をしたうえで治療する。
派手ではありませんが、この順番を大切にすることが、結果的に遠回りを減らすことにつながると考えています。
治療のゴールを正しく設定する

老人性色素斑はきれいに改善しても、紫外線や加齢の影響が続けば、新しいシミが別の場所に生じることがあります。肝斑は一度色調が改善しても、紫外線や刺激などをきっかけに再び目立つことがあります。脂漏性角化症も、除去した病変とは別に新しく生じることがあります。
大切なのは、治療した病変をどう改善するかだけでなく、その後の肌をどう維持していくかまで考えることです。
クリニックを受診するときは、「何回で消えますか?」だけでなく、
といったことも確認してみてください。
治療後まで含めて考えることで、自分に合った治療を選びやすくなります。
まとめ:治療の「順番」が結果を決める
シミ治療で大切なのは、機器の選択よりも前に、正しい順番で治療に臨むことです。
まず正確な診断を受ける。次に背景の炎症をコントロールし、プレトリートメントで皮膚の状態を整える。そのうえで適切な機器治療を選択する。治療後も日頃のケアを継続して、良い状態を維持する。
この流れを理解した上でクリニックを受診することが、「治療したのに良くならない」という状況を防ぐ最も確実な方法です。
次の「肝斑の解体新書」では、シミ治療の中で最も難しい肝斑に焦点を当てます。なぜ肝斑はこれほど難治なのか、炎症という視点から深く解体していきます。


コメント